腹部コンパートメント症候群
腹部コンパートメント症候群(abdominal compartment syndrome; ACS)
- 病態
腹腔内圧が上昇するような病態。
具体的には腹腔内圧が20mmHg以上であり、かつ臓器障害(汎用されている所見としては尿量低下)が生じた状態と定義される。
外傷や重症膵炎などにより大量の輸液を必要とする症例では、腹腔内臓器や後腹膜の著明な浮腫により腹腔内圧が上昇して、腹腔内臓器の灌流障害をきたす。
- 対応
腹腔内圧は直接測定できないため、膀胱内圧で代替する。
Ivaturyらは膀胱内圧25mmHg以上での減圧開腹を推奨している。
・膀胱内圧測定
- 治療
治療は腹腔内の減圧が最重要。
血液あるいは腹水貯留が腹腔内圧上昇の原因なら、開腹して腹腔ドレナージの適応となる。
しかし、減圧開腹術で生理学的パラメーターが改善しても救命に直結する訳ではなく、腹圧を上昇させる原因を除去し、病態を修飾する因子の連関を断つ必要がある。
ACSに対して一時的な減圧開腹術では軽快しないと判断した場合には、応急的な閉腹法(towel clip closure,silo closure,vacuum pack法など)をおこなう。本質的な病態の改善を待って閉腹するのが有効である。
参考
重症患者管理マニュアル
https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0418.html
急性膵炎診療ガイドライン2015