機能性ディスペプシアの診断と治療
機能性ディスペプシア(Functional dyspepsia: FD)
- 定義
機能性消化管疾患診療ガイドライン2014より以下。
病状の原因となる器質性、全身性、代謝性疾患がないのにも関わらず、慢性的に心窩部痛や胃もたれなどの心窩部を中心とする腹部症状を呈する疾患。
- 病態
上部消化管内視鏡などで潰瘍や癌などの器質的疾患を認めないにも関わらず、胃や十二指腸由来と思われる上腹部症状がある疾患。
原因は明らかでない。精神的ストレスや消化管運動異常、知覚過敏等が原因の一つと考えられている。
最近では細菌やウイルスによる感染性腸炎治癒後に機能性ディスペプシアが発症していることも報告されています。
また、ピロリ菌の除菌によって症状が改善する場合はピロリ菌関連ディスペプシア(HpD)として、機能性ディスペプシアから切り分けられるようになってきている。
- 症状
胃・十二指腸領域由来と考えられる4つの症状がRomeⅣ基準では診断基準に含まれる。
①心窩部痛(みぞおち辺りの痛み)
②心窩部灼熱感(みぞおち辺りの焼ける感じ)
③食後の胃もたれ
④早期飽満感(食事開始後すぐに胃が充満した感じとなり、食事を最後まで摂取できない状態)
症状の正確な把握については、客観的な評価のために自己記入式質問表がよく用いられる。
代表的なものに、GSRS、出雲スケール、FSSGなどがあり、これらは治療効果判定にも有用とされ、積極的に行うことが勧められる。
- 診断基準
・RomeⅣ基準(2016)
下記の症状のいずれかが診断の少なくとも6か月以上前に始まり、かつ直近の3か月間に上記症状がある。
- つらいと感じる心窩部痛
- つらいと感じる心窩部灼熱感
- つらいと感じる食後のもたれ感
- つらいと感じる早期飽満感
及び症状を説明しうる器質的疾患はない。
以下のPDSとEPSの2つ病型に分類されている。
・食後愁訴症候群(PDS)の診断基準
少なくとも週に3日、次の1-2のいずれか1つか2つを満たす。
- つらいと感じる食後のもたれ感
- つらいと感じる早期飽満感
・心窩部痛症候群(EPS)の診断基準
少なくとも週に1日、次の1-2のいずれか1つか2つを満たす。
- つらいと感じる心窩部痛
- つらいと感じる心窩部灼熱感
- 治療
PDSに対しては消化管運動機能改善薬が、EPSに対しては酸分泌抑制薬が有効となる可能性がある。
薬剤の併用に関しては単剤投与と比較して有用とのエビデンスはないが、FDの病型が併存する場合は治療効果が高まることが予測される。
治療抵抗の患者に関しては、4週間を目安として治療法を変更することが推奨されている。
・消化管運動機能改善薬
オピオイド受容体刺激作用:
トリメプチン(セレキノン®)
ドパミンD2受容体拮抗作用:
メトクロプラミド(プリンペラン®)
イトプリド(ガナトン®)
5-HT4受容体刺激作用:
モサプリド(ガスモチン®)
コリンエステラーゼ阻害作用:
アコチアミド(アコファイド®)
・酸分泌抑制薬
・漢方薬
参考
機能性消化管疾患診療ガイドライン2014
消化器疾患の診断基準病型分類重症度の用い方
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000802.html
消化器疾患最新の治療2019-2020