免疫チェックポイント阻害薬関連消化管病変の診断と治療
免疫関連大腸炎(IMC):immune-mediated colitis
irAE腸炎
- 概要
ICI投与から発症までの期間は、抗CTLA-4抗体では1ヶ月、抗PD-1抗体では2~4ヶ月。
下痢や大腸炎のirAEはICI投与から5~10週後に起こりやすいとの報告もある。
抗PD-1抗体+抗CTLA-4抗体の併用でIMCの発生頻度は増加する。
併用>抗CTLA-4抗体>抗PD-1抗体
抗CTLA-4抗体ではICIのdoseやNSAIDs使用、IBDの既往がリスクとなる。
抗PD-1抗体では、メラノーマ>NSCLC、RCC
- 免疫チェックポイント阻害薬の種類
・抗CTLA-4抗体:イピリムマブ(IPI)
・抗PD-1抗体:ニボルマブ(NIV)、ペムブロリズマブ
・抗PD-L1抗体:アテゾリズマブ、アベルマブ
- 所見
・内視鏡所見
特異的ではないが、発赤、血管透見像の消失、びらん、潰瘍、顆粒状粘膜などが報告されている。
なかでも、血管透見像の消失した顆粒状粘膜は、しばしば潰瘍性大腸炎様の粘膜病変として、本症に特徴的な可能性がある。
・病理所見
特異的ではないが、陰窩内のアポトーシス、陰窩膿瘍、陰窩のねじれ・萎縮、線維化、杯細胞の減少など。
抗CTLA-4抗体→CD4+T細胞優位の浸潤
抗PD-1抗体→CD8+T細胞優位の浸潤
- 鑑別
腸結核、CD腸炎、CMV腸炎などの感染性大腸炎などとの鑑別が最も重要。
膠原線維性大腸炎やNSAIDs腸炎などの他の薬剤性腸炎、好酸球性消化管障害など
CDトキシン、CMVアンチゲネミア、T-SPOT、生検で抗酸菌培養の提出などを行う。
- 治療
・対症療法
Grade1/2であれば対症療法(低繊維食、経口補水、ロペラミド)は選択肢。
改善がなければ追加検査(直腸S状結腸での生検、腹部CT)
・コルチコステロイド
irAEに対して速やかに効果を示し、多くの症例では唯一の治療法となる。
重症irAEでは速やかに投与を開始する。
コルチコステロイドはICIの効果を妨げない。
irAEの発現臓器ごとの適切な量、重症度にあわせた適切な投与経路を決定する。
経口の場合は、適切な分子を選択する。(プレドニンの方がプレドニゾロンより生物学的利用能が高い)
Grade1/2:経口プレドニゾロン(0.5-1mg/kg/day)or軽微な腸炎であればブデゾニド9mg/day
Grade3/4 or1/2で開始3日以内に改善がない場合:メチルプレドニゾロン1mg/kg/day静注、免疫チェックポイント阻害薬中止
・インフリキシマブ
3-5日以内に改善なし又は増悪する場合で穿孔・敗血症・禁忌がない場合
5mg/kgで投与。必要であれば2週間後に再投与。
参考
吻合部ポリープ状肥厚性胃炎について
術後胃
吻合部ポリープ状肥厚性胃炎:stomal polypoid hypertrophic gastritis;SPHG
- 概念
特異な慢性炎症性胃粘膜病変で胆汁などの逆流により生じる組織学的変化と考えられている。
胃腸吻合部の胃側に発生する無茎性ポリープ状の粘膜隆起性の反応性病変。
SPHGの成因は、化学的刺激として胆汁酸・膵液を含む十二指腸液の残胃への逆流が重要な因子と考えられている。
その理由として、本病変がBillrothII法のような十二指腸液の逆流が強いと考えられる術式の例に多いこと、十二指腸液に抵抗性のある幽門部領域に吻合された症例にほとんど認められず、逆にその影響を受けやすい体部・噴門部領域に吻合された胃粘膜、なかでも胃底腺の豊富な大彎側および前後壁に多く発生することなどが挙げられている。
前癌病変としての側面が重要。
SPHGの表層粘膜には幼弱な上皮が多く、何らかの発癌因子が作用すると癌化が起こり易いと予想されている。
なので、B-Ⅱ術後で長期間経過症例で注意深く観察が必要。
- 内視鏡像
①一般的にはイモ虫状広基性ポリープと表現される特徴的な肉眼像を呈する。
②正常粘膜ひだへと漸次移行を示す
③隆起部の表面に均一に腫大した胃小区を認める
以上が特徴的。
- 病理
組織学的な発症の過程は、
初期には
①幼弱胃腺窩上皮の過形成による胃小窩の延長
②既存の胃底腺の萎縮
③偽幽門腺の増生と嚢胞化が起こり
次いで
④粘膜筋板の離開
⑤偽幽門腺の粘膜筋板内や粘膜下層への侵入と嚢胞形成により粘膜の肥厚が起こる
とされている
参考
内視鏡診断マル秘ノート
膵・胆管合流異常症の病態と診断
- 病態
膵・胆管合流異常は解剖学的に膵管と胆管が十二指腸壁外で合流する先天性の形成異常。
共通管が長く、十二指腸乳頭部括約筋(Oddi括約筋)作用が膵胆管合流部に及ばないため、膵液と胆汁が相互に逆流することにより、胆道ないし膵にさまざまな病態を引き起こすとともに、癌合併が重要な問題となる。
膵液の胆道内への逆流(膵液胆道逆流現象)は高率に胆道癌を発生させ、胆汁の膵管内への逆流(胆汁膵管逆流現象)は膵炎を惹起させることがある。
- 分類
胆管拡張を伴う例(先天性胆道拡張症)と胆管に拡張を認めない例(胆管非拡張型)がある。
境界は成人では総胆管径10mmを用いることが多い。
- 診断
ERCPやPTCDや術中胆道造影などで異常に長い共通管が確認される、または異常な形で合流すること。
MRCPやMD-CTやEUSなどによっても診断されうる。診断基準の改訂がまたれる。
補助診断として、胆汁中の膵酵素の異常高値があげられる。
ただし、潜在的膵液胆道逆流や膵胆管高位合流などでもみられる。
- 症状
無症状の事も多い。
腹痛・嘔吐・黄疸・発熱などがでる事もある。
- 検査
血液検査は多くの場合、無症状時は異常がなく、有症状時にAMY・ビリルビン・胆道系酵素上昇などがみられる。
腹部エコーはスクリーニングに有用である。
胆管非拡張型膵・胆管合流異常の場合は、胆嚢壁内側の低エコー層の肥厚が診断の契機となる。
スクリーニングで疑った場合は、MRCP・ERCPなどが追加される。
- 治療
胆道癌の危険因子であり、確定診断後は症状の有無に関わらず積極的な手術適応であり、早期の手術が推奨される。
胆管拡張型には肝外胆管切除+胆道再建(分流手術)を,胆管非拡張型には胆囊摘出術が推奨される。
参考
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tando/26/5/26_678/_pdf
消化器内科のおすすめの教科書
全般
- 消化器疾患最新の治療2023-2024
自身の知識を更新する事ができる。おすすめ。
- 専門医のための消化器病学 第3版
- ブラッシュアップ急性腹症第2版
腹痛について一度はこの本で基本的な概念を学ぶと考えがまとまりやすい。通読するのもしんどくないです。
- 病気が見える vol1 消化器
学生向けと思われがちだが普通にわかりやすい。基本に立ち返る事ができる。
内視鏡
上部内視鏡検査のやり方についてはとりあえずこの本を読んでおけば足りない事はない。
間違いなく良書。少し文章に癖がありますが、口語体で読みやすく、内容は非常におすすめです。間違いない良書。
内科Joslerについての経験まとめ(内科新専門医)
josler終了しましたが、自身の経験をメモに残しておきます。
・症例登録
160例と数は多いが結局は自身のプログラム内での評価のみ。なので最終的にはなんとかなるため一つ一つに時間をかける必要はない。指導医の理解を得る事が大事。病歴要約に時間をかける。
続きを読む気管支喘息発作の初期対応
- 喘息発作の強度と治療ステップ
http://ryumachi.umin.jp/clinical_case/BA.html
※%PEFは%予測値または自己最良値を用いる。
ピークフローで測定できないほど辛そうなら大発作以上として扱う。
続きを読む