消化器内科takoitaのメモ

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IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)の診断と治療

  • 病態

IgG4関連疾患の胆管病変。

 

血中IgG4の上昇、病変局所へのIgG4陽性形質細胞浸潤などを認める。

臨床的特徴としては高齢者・男性、閉塞性黄疸で発症することが多い点はPSCと同様だが、ステロイド治療に良好に反応することより、PSCとは別の病態と考えられている。

単独で発症する場合もあるが、胆管以外の臓器病変(自己免疫性膵炎、硬化性唾液腺炎、後腹膜線維症、腹腔・肺門リンパ腺腫大、慢性甲状腺炎、間質性腎炎など)を合併することがあり、IgG4関連の全身的疾患と考えられているが、PSCのように炎症性腸疾患を合併することはまれである。

自己免疫性膵炎を合併する症例の多くは下部胆管の狭窄を伴うが、膵腫大による圧迫狭窄例と胆管壁の炎症性肥厚を伴う狭窄例があり、前者の狭窄例もIgG4-SCとすることについては異論もある。

 

  • 診断

・画像

MRCPにて狭窄の存在診断はある程度可能であるが、基本的にはERCPや経皮経肝胆管造影などによる直接胆管造影が必要である。

胆管狭窄部に全周性の壁肥厚所見を認め、内膜面、外膜面は平滑で内部は均一である。

また、明らかな狭窄部以外の胆管壁、時には胆嚢壁にも広範に同様の肥厚所見を認めるのが特徴的である。

PSCに特徴的な帯状狭窄(長さ1-2mmの狭窄)、数珠状所見(狭窄と拡張が交互に出現)、剪定状所見(肝内胆管分枝の減少)、憩室様突出を認めることは少なく、狭窄の長さはPSCと比較すると長いのが特徴である。

・血中IgG4

IgG4高値は、アトピー性皮膚炎、天疱瘡、喘息など他疾患にも認められるため、本疾患に必ずしも特異的ではない。

特に胆管癌、膵癌などの他の膵胆道の悪性疾患でも高値を呈する場合があるため注意を要する。

・病理

病理組織学的には、lymphoplasmacytic sclerosing cholangitis(LPSC)とも称され、著明なリンパ球とIgG4陽性形質細胞の浸潤、花筵状線維化(storiform fibrosis)、閉塞性静脈炎が特徴的所見。

PSCと異なり、胆管上皮の破壊は稀で、むしろ炎症の主座は胆管上皮下の分泌腺や結合織にあり、炎症が上皮を主体とするものである場合にはPSCとの慎重な鑑別を要する。

従来、PSC に特徴的といわれている胆管周囲の玉ねぎ様線維化像(onionskin-like appearance)は IgG4-SC でも時にみられる。

免疫組織学的解析では、PSCにおいてIgG1陽性形質細胞の浸潤が強くIgG4陽性形質細胞浸潤は軽度であるのに比し、IgG4-SCではIgG4陽性形質細胞の著しい浸潤とともにIgG4/IgG陽性細胞数比の高い(40%~)ことが明らかにされている。

 

  • 治療

治療法は確立されていないが、ステロイドが奏功し、IgG4関連硬化性胆管炎診療ガイドラインに推奨されている。

ステロイド治療を行うときは、必ずその反応性を確認することが必要である。

ステロイド治療の経過から腫瘍性病変が否定できない場合、膵胆道悪性腫瘍を念頭においた再評価を行う必要がある。

 

  • 予後

長期予後は肝硬変への移行や胆管がんの合併を含めて不明である。

 

 

参考

https://www.jsge2020.org/post/data/106pgc_test.pdf