消化器内科takoitaのメモ

消化器内科医takoitaのメモ

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便秘に使う下剤

 
  • 浸透圧性下剤
浸透圧により便を軟化する事で排泄しやすくする。

 

 
塩類下剤
・酸化マグネシウム(マグミット®︎、マグラックス®)
腎機能低下例(eGFR<60)や長期間内服患者や高齢者の高Mg血症に注意。eGFR<30で使用不可。
活性型VitD製剤との併用で高Mg血症の恐れがある。
 
効果発現は8−10時間
 
用法用量:
2gを分3食後または眠前
 
クエン酸マグネシウム(マグコロール®︎)
マグコロールは液剤、マグコロールPは散剤(水に溶解して使用)となる。
下部内視鏡の前処置に使われる事が多い。
 
注意点は酸化マグネシウムと同じ。
 
効果発現は0.5−3時間
 
・水酸化マグネシウム(ミルマグ®)
酸化マグネシウムとほぼ同じ。
 
 
・リン酸二水素ナトリウム(ビジクリア®)
便秘への適応がなく、禁忌も多いため使用しない。
 
糖類下剤
ラクツロース(ラグノス®、モニラック®、ピアーレ®)
便秘症での保険適応なし。
適応症は産婦人科術後の排ガス・排便の促進、小児における便秘の改善のみ。
 
人工2糖類であり、大腸まで到達して水分泌を促進する。腸内環境改善作用もある。
スティック状の経口ゼリー剤であり、甘みがあって飲みやすい。
量の調節が容易。
 
糖類のため糖尿病患者では注意が必要。
使用数日で腹部膨満感などを生じるが通常は連用すると治まる。
 
便秘症での保険適応なし。
 
ラクチトール
便秘症での保険適応なし。
 
浸潤性下剤
下剤の中では効果が弱いと考えられ、合剤の形をとる。
ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS、別名ドキュセートナトリウム)+カサンスラノールがビーマス®
ジオクチルソジウムスルホサクシネート(別名ドキュセートナトリウム)+ビサコジルがコーラックⅡ®
 
・ビーマス®
 
 
ポリエチレングリコール(モビコール®)
高分子化合物。
 
欧米では塩類下剤を使用できない際の第一選択。量の調節が容易であり、非吸収性のため安全性が高い。
粉末を溶解する手間がある(液剤として使用)。食料や飲料に混ぜて使える。
日本では小児のみ使用可?
 
 
  • 刺激性下剤
弛緩性便秘に対して使う。
痙攣性便秘では避ける
 
アントラキノン系
・センノシド(センナサイド®、プルゼニド®)
使用経験が豊富。
 
効果発現は8−10時間
 
作用強いが耐性生じやすい。
長期間連用すると大腸(偽)メラノーシスをきたし得る(大腸癌リスク?)。
赤〜燈色の尿が出る。
 
用法用量:
12~24mgを1日1回就寝前。最大48mg
 
・センナ(アジャストA®、ヨーデル®)
長期間連用すると大腸(偽)メラノーシスをきたし得る。
 
80mgを1日1回就寝前。最大240mg
 
・センナ実・センナ葉製剤(アローゼン®)
 
用法用量:
0.5~1gを1日1~2回
 
ジフェニルメタン系
体内に殆ど吸収されず、妊婦・授乳婦にも比較的安全。
長期使用による耐性が問題。
 
ピコスルファートナトリウム水和物(ラキソベロン®︎、ピコペン®)
慢性便秘症のレスキューとしては推奨される。
 
効果発現は7−12時間
腸管刺激薬の中では比較的緩徐に効いてくる
 
用法用量:
5~7.5mg/回を1日1回。最大は大腸検査で150mg
 
・ビサコジル(テレミンソフト®)
便秘症での保険適応なし。
 
10mg/回を1日1~2回(乳幼児)
 
小腸刺激剤
・ヒマシ油
 
直腸刺激剤
・炭酸水素ナトリウム坐剤(新レシカルボン®)
 
 
  • 膨張性下剤
便の量を増やすのは膨張性下剤のみ。
軽症~中等症の便秘の第一選択にもなりうる。
IBSや便秘症による下痢症状を緩和する可能性がある。
便秘薬による下痢がひどい場合は選択肢となる。
 
ただし、結腸通過時間遅延型便秘(STC)では症状が増悪する。
また、腹部膨満感や即効性は期待できないなど。
 
・カルボキシメチルセルロース(バルコーゼ®)
便秘症への適応あり。
薬物相互作用は殆どない。
 
飲みづらい。
妊婦への大量投与は避ける。
 
用法用量:
1.5~6g(2.0g~8.0g)分3(適宜増減)
 
・ポリカルボフィルカルシウム(コロネル®、ポリフル®)
便秘症での保険適応なし。
使うにはIBSの診断が必要。
散剤が無理なら錠剤もある。
 
Caを含むので薬物相互作用が多少ある。
 
用法用量:
1.5~3g分3を十分な量の水(コップ1杯)とともに服用。
 
 
  • 上皮機能変容薬
・ルビプロストン(アミティーザ®)
クロライドチャネルアクチベーター
 
消化管上皮細胞のCIC-2を活性化し、腸管内の水分泌を促進して軟便化する。
高齢者に使いやすい。効果が高い。
 
副作用:
若年女性で嘔気が出やすい。
妊産婦では使用禁忌。
 
用量:
24mgを1日2回。12mgに減量可。
 
 
・リナクロチド(リンゼス®)
グアニル酸シクラーゼC受容体アゴニスト
便秘症での保険適応なし。
 
便秘型IBSに適応がある。
 
消化管上皮細胞のGC-Cに作用し、腸管内の水分泌を促進して軟便化する。
腹痛・腹部不快感を改善させる効果もある。
非常に効果が強い。
 
副作用:
効果が強すぎるため水様便をきたすこともある。
 
用量:
効果が非常に強いため併用ではなく単剤から開始する。
2錠/日→1錠/日に減量可能。
 
 
  • 胆汁酸トランスポーター阻害薬
・エロビキシバット(グーフィス®)
 
胆汁酸トランスポーター(IBAT)を阻害し、胆汁酸の再吸収を抑制する事で、大腸内に流入する胆汁酸の量を増加させ、排便を促す。
 
機序が生理的であり、安全性が高い。
効果は強いが水様便をきたす事は比較的少ない。
 
用量:
2錠/日から開始。3錠/日に増量可能。
効きすぎたら1錠/日に減量可能。
 
 
  • 消化管運動改善薬
・モサプリド(ガスモチン®︎)
効果発現は1−3日
5−HT4受容体アゴニスト
 
用法用量:
5mg/回を1日3回
 
・エリスロマイシン(エリスロシン®)
モチリン受容体作動薬
基本は適応外。緊急時や他の手段が不可の場合のみ。
強皮症による便秘や小腸閉塞に有効ともいわれる。
 
耐性菌や連用による耐性の問題。
 
・ネオスチグミン(ワゴスチグミン®)
麻痺性イレウスやOgilvie症候群に用いられることがある。
 
用法用量:
2~2.5mgをiv(3分かけて)
ECG・SpO2モニターのもと、アトロピンivの準備をしておく。
 
・ベタネコール(ベサコリン®)
3環系抗うつ薬による便秘の改善に有効との報告もある。
 
10mgを内服
 
  • 坐薬・浣腸
・炭酸水素ナトリウム坐剤(新レシカルボン®)
 
挿入時体位は坐位または立位
 
作用発現は15~30分
 
副作用は放屁
 
・ビサコジル坐剤(テレミンソフト®)
 
挿入時体位は指定なし
 
作用発現は約60分
 
副作用は下痢・腹痛
 
 
挿入時体位は左側臥位
 
効果発現は15−30分
頻回使用は避ける
 
副作用は直腸穿孔・貧血・腎不全
 
・大黄甘草湯
大黄=センナ
 
効果発現は6−10時間
 
長期使用で大腸メラノーシス
甘草があるので低K血症きたしうる
 
・大建中湯
便秘症での保険適応なし。
イレウス改善の効果があるといわれる
5-HT4、5-HT3受容体刺激によりAch遊離を促進。
モチリン分泌を促進。
知覚神経におけ るTRPV1チャネルを介してサブスタンスPの遊離を促進。
 
 
  • その他
・ナルデメジン(スインプロイク®)
オピオイドによる便秘症を改善。
オピオイド誘発性便秘はオピオイドローテーションも選択肢。
 
副作用:
消化管穿孔の危険性が高まる恐れがああり、消化管閉塞又はその疑いのある患者、既往歴があり再発の恐れの高い患者には投与しない事。
 
 
  • リスト
 
分類
 
一般名
商品名
 
浸透圧性下剤
塩類下剤
マグミット
 
マグコロール®︎
 
ミルマグ®
 
 
糖類下剤
 
 
ラクツロース
ラグノス®
 
 
 
ラクチトール
 
 
浸潤性下剤
ジオクチルソジウムスルホサクシネート
ビーマス®
 
 
モビコール®
 
刺激性下剤
大腸刺激性下剤
センノシド
センナサイド®、プルゼニド®
 
 
センナ
アジャストA®、ヨーデル®、アローゼン®
 
 
ピコスルファートナトリウム水和物
 
 
ピサコジル
テレミンソフト®
 
 
 
 
膨張性下剤
 
カルボキシメチルセルロース
バルコーゼ®
 
 
ポリカルボフィルカルシウム
 
 
上皮機能変容薬
クロライドチャネルアクチベーター
ルビプロスト
アミティーザ®
 
グアニル酸シクラーゼC受容体アゴニスト
リナクロチド
リンゼス®
 
胆汁酸トランスポーター阻害薬
 
エロビキシバット
グーフィス®
 
腸管蠕動促進薬
 
 
 
 
大黄甘草湯
 
 
 
大建中湯
 
 
 
 
 
 
参考
ジェネラリストのための内科診断リファレンス
極論で語る消化器内科
日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断・治療研究会編:慢性便秘症診療ガイドライン2017