消化器内科takoitaのメモ

消化器内科医takoitaのメモ

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高カルシウム血症の初期対応

血性Ca10.5mg/dl以上を高Ca血症という。

 

 
  • 症状
脱力感、抑うつ状態、多尿、脱水、腎結石、食欲不振、悪心、便秘、軟部組織への石灰沈着など。
Ca12mg/dl以上で意識障害が出現しうる。
 
  • 診断
第一にビタミンD製剤、Ca製剤、サイアザイド系利尿剤の内服の可能性を考える。
次に、悪性腫瘍と原発副甲状腺機能亢進症を考える。
上記で高Ca血症の90%を占めるといわれる。
(通常、原発副甲状腺機能亢進症では血清Ca11mg/dl以下。13mg/dl以上は悪性腫瘍を考える)
 
・診断のアプローチ
まず、intact PTHの測定(PTHによるものかどうかの判断)
①PTHが高値ないし正常高値
家族性低Ca尿性高Ca血症
 
②PTHが抑制(PTH<20pg/dL)
PTHrP、1,25-VitD、25-VitDの測定
 
悪性腫瘍:PTHrP上昇
結核、サルコイドーシス、リンパ腫:1,25-VitD上昇
ビタミンD製剤の影響:25-VitD上昇
多発性骨髄腫、甲状腺機能亢進症、ビタミンA中毒、長期臥床:PTHrP、1,25-VitD正常
 
  • 治療
まず緊急で治療を行うかは原因疾患の症状の有無、高Ca血症の程度によって判断する。
 
ごく軽度の症状でCa<12mg/dlなら緊急治療の必要はない。
Ca値が12-14mg/dlでも、慢性的な高Ca血症なら緊急治療の必要はない。
 
急激なCa上昇に意識障害を伴えば緊急治療が必要。
14mg/dl以上では症状がなくても緊急治療が必要。
 
以下、重症高Ca血症の治療
①生理食塩水の投与
浮腫がなければ200-300ml/hで投与開始。尿量100-150ml/hを維持。
 
高Ca血症は尿の尿縮障害により尿中への水分喪失を合併し、腎でのCa再吸収亢進によって更に高Ca血症となる。生食は脱水改善及び尿中へのCa排泄を促進する。
 
②フロセミド(ラシックス®)
 
ループ利尿薬はHenleの上行脚のCa再吸収を抑制し、高Ca血症を改善する。
しかし、生食大量投与+ラシックスは特に電解質異常を誘発しやすく、ビスホスホネート製剤のある現在では意義は少ない。
 
③カルシトニン(エルカトニン:エルシトニン®)
 
40単位を1日2回筋注
または
40単位+生食100mlを静脈投与(1-2時間かけて)
 
効果は迅速で数時間でCaの低下を認める。
初期は有効だが、数日でエスケープ現症により有効性が落ちる。
 
④ビスホスホネート製剤
パミドロ酸(アレディア注®)1回30-45mg+生食500mlを静脈投与(4時間かけて)
または
ゾレトロン酸(ゾメタ注®)1回4mg+生食100mlを静脈投与(15分以上かけて)
 
アレディアの保険適応は悪性腫瘍による高Ca血症、乳癌の溶骨性骨転移
ゾメタの保険適応は悪性腫瘍による高Ca血症、多発性骨髄腫による骨病変および固形癌骨転移による骨病変
 
持続的で強力なCa低下作用だが、最大の効果発現には約2-4日を要する。
悪性腫瘍に伴う高Ca血症にも単回投与で有効。
 
再投与には少なくとも1週間の投与間隔を置く。
 
長期投与では下顎骨壊死が起こりうる。歯科スクリーニングを。
 
 
 
参考
電解質輸液塾