消化器内科takoitaのメモ

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憩室炎の診断と治療

 
  • 病態
憩室炎は、憩室の微小穿孔(microperforation)によって生じる憩室とその周囲の急性炎症。

 

この炎症は腸管壁と周囲脂肪組織に波及する。
 
日本では60歳未満で右側結腸憩室炎が多く、より高齢では左側結腸憩室炎が多い。
左側結腸憩室炎がの方が合併症を伴いやすく重症化しやすい。
 
膿瘍等の合併症を有する大腸憩室炎の死亡率は2.8%、合併症がない大腸憩室炎の死亡率は0.2%である。
 
  • 診断
臨床的には、左下腹部痛、発熱、白血球増加の組み合わせで疑う。
他に、悪心・嘔吐、便通の変化、隣接臓器症状(排尿時痛、頻尿など)を呈する場合もある。
 
CTは憩室炎の診断において、感度93~97%、特異度100%とされる。
確定診断と合併症の診断に寄与し治療方針の決定を助ける。
 
憩室炎の穿孔の程度に基づくHinchey分類
StageⅠ:孤立した結腸傍膿瘍を伴う穿孔性憩室炎
StageⅡ:遠位に膿瘍を形成して自然閉塞した穿孔性憩室炎
StageⅢ:糞便性腹膜炎を伴う非交通性の穿孔性憩室炎
StageⅣ:穿孔による腹膜との交通で糞便性腹膜炎をきたした憩室炎
 
原疾患として大腸憩室症以外の病変を否定することは重要であり、実施が困難な症例を除き大腸内視鏡検査を一度は行うことを推奨する。
 
  • 治療
膿瘍・穿孔を伴わない大腸憩室炎で、炎症反応や発熱等から入院加療を要する場合には、食事制限と腸管安静を行う。
膿瘍・穿孔を伴わない大腸憩室炎に抗菌薬は不要との報告もあるが、データは不明であり現状では抗菌薬投与は許容される。
 
抗菌薬例
外来:
①シプロフロキサシン200~500mg3回/日+メトロニダゾール500mg4回/日
②アモキシシリン/クラブラン酸375mg/125mg4回/日
入院:
軽症中等症 セフメタゾール1g6時間おき
重症 カルバペネム系、クリンダマイシン+アズトレオナムなど
 
StageⅠorⅡの膿瘍は、経皮的ドレナージと抗菌薬投与で保存的に加療可能である。
StageⅠの一部に相当する3cm以下、とりわけ壁内に存在する病変はドレナージが主義的に困難であることもあり、保存的に加療する。
 
HincheyStageⅢorⅣの時は緊急手術の適応だが、臨床的に敗血症である所見がなければ手術を回避できる場合もある。
 
急性期炎症後(6週目以降)の大腸内視鏡検査は、推奨する文献もあったり意義が薄いとの報告もある。
これまで受けたことない患者に行う意味はあるが、数年以内に行っていれば無理にしなくても良いかもしれない。
 
 
 
 
 
参考
Hospitalist 消化管疾患
大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン