消化器内科takoitaのメモ

消化器内科医takoitaのメモ

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鉄剤の種類・違い

 
・鉄の吸収
食事中の鉄はヘム鉄と非ヘム鉄(イオン化鉄)に分けられる。
非ヘム鉄はより吸収されにくい。

 

非ヘム鉄はさらに二価鉄(第一鉄)と三価鉄(第二鉄)に分けられる。
三価鉄は胃酸及び上部小腸で二価鉄に還元されることで吸収される。
 
・副作用
最も高頻度(約1割)に起こるのが消化器症状(悪心・便秘・腹部不快感・腹痛・下痢・嘔吐など)。
便が黒くなる。
 
・鉄剤の種類
一般名
商品名
鉄含有量
特徴
内服方法
・経口用
 
 
 
 
乾燥硫酸鉄
フェロ・グラデュメット
105mg/tab
徐放性
空腹時~食直後
 
テツクール徐放錠
100mg/tab
徐放性
 
フマル酸第一鉄
フェルム
100mg/cap
徐放性
空腹時~食直後
クエン酸第一鉄ナトリウム
フェロミア
50mg/tab
非イオン型
食直後
溶性ピロリン酸第二鉄ナトリウム
インクレミン
6mg/ml
シロップ/小児用
 
・静注用
 
 
 
 
含糖酸化鉄
フェジン
40mg/2ml
 
 
 
徐放剤は胃内で急速に鉄が放出されることがなく、胃粘膜への刺激が少なくて空腹時の内服が可能。
ただし、吸収は胃酸の影響を受けるので食後は吸収効率が下がり、制酸薬とは内服時間を話す必要がある。
 
クエン酸第一鉄ナトリウム(フェロミア®)は低分子キレートのまま小腸で吸収されるため、胃の酸度に影響されず安定した吸収が得られる。
また、非イオン型なので胃粘膜を刺激する鉄イオンの遊離がなく、消化器症状を抑えられる。
胃切除後では胃酸分泌が減少しており、胃酸の影響を受けにくいクエン酸第一鉄ナトリウムが第一選択薬となる。
 
溶性ピロリン酸第二鉄ナトリウム(インクレミン®)は、シロップ剤であり甘味がついていて比較的内服しやすい。後味はやはり鉄の味がする。
鉄剤特有の金属味が苦手な場合には使用を考慮する。
副作用の消化器症状も比較的少ない。
ただし、基本小児用のため大人にとっては補充鉄剤としてやや少なくなってしまう。
また、胃酸の影響を受けるため食後は吸収効率が下がり、制酸薬とは内服時間を話す必要がある。
鉄による舌の色調変化もある。
 
・内服のコツ
①空腹時から食直後に内服時間を変更する。鉄の消化管粘膜への刺激は軽減される。ただし、吸収効率は低下する。
②就寝前に内服する。悪心症状は内服後30~60分で出現するため。
③分割内服する。消化器症状は用量依存の傾向があるため。
④投与量を減量する。
⑤薬剤の種類の変更をする。味が苦手ならカプセルやシロップなどを検討する。
⑥胃薬を併用する。吸収効率からは制酸剤より粘膜保護薬が良い適応。
⑦様子をみる。次第になれてくる人もいる。
その他:ビタミンCは吸収を助けるため併用することもあるが、消化器症状が強くでる場合もある。お茶は吸収阻害はいうほどなくあまり気にせずとも良い。
 
・注射薬の適応
①出血など、鉄の損失が多く傾向鉄剤では間に合わない場合
②消化器疾患で内服治療が不適切な場合(炎症性腸疾患では吸収効率低下や過剰鉄が炎症を増悪させることがあるため可能な限り静注)
③鉄吸収率が極めて悪い場合
④透析や自己血輸血の際の鉄補給が必要な場合
 
・静注療法の実際
必要な総鉄投与量の計算
①{2.72×(16-Hb)+17}×体重
②(16-Hb)/100×3.4×65×体重+500
③(15-Hb)×体重
 
一日あたり40-120mgずつ投与する。
必要量に達すれば治療を打ち切る。
 
鉄剤の希釈にはブドウ糖液を使用する。
まれにアナフィラキシーを起こすため初回投与に注意。
 
静注療法後に経口内服を行っても鉄による粘膜ブロックが起きて、殆ど吸収されないため意味がない。
 
治療後のフェリチンは一時的に上昇するため、投与終了2週間後に測定する。
 
 
参考
むかしの頭で診ていませんか?血液診療をスッキリまとめました