消化器内科takoitaのメモ

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胃潰瘍の診断と治療

  • 病態
胃の消化管壁が障害を受けて組織の欠損を生じる良性疾患。
病理組織学的に粘膜筋板までの欠損はびらんとして扱われ、粘膜下層以深に生じた病態を指す。

 

 
原因の多くがH.pylori感染とNSAIDsである。
 
  • 症状
空腹時や食後2-3時間の心窩部痛、胸焼け、悪心、胃もたれ感など。
吐血下血を初発とする患者も多い。血液が胃酸と反応して黒色便(タール便)を呈する事が多いが、出血量が多い場合は、新鮮血の下血を呈する。
 
高齢者や糖尿病患者では、穿孔や出血などの合併症を生じるまでは腹部症状を伴わず、貧血によるふらつきが主訴の場合もある。
 
  • 検査
上部内視鏡検査。
ピロリ検査も状況に応じた検査を行う。
 
内視鏡的分類(嶋田・大森・三輪分類)
①活動期(Active stage)
A1:厚い白苔をつけていて、周囲の粘膜が浮腫状にふくらみ、再生上皮が全く認められない時期。
A2:周囲の浮腫が減退し、潰瘍縁が明確にふちどられ、潰瘍縁においてわずかに再生上皮が出現している。潰瘍辺縁の発赤や潰瘍縁に白色の苔帯がみられる事が多い。潰瘍縁まで粘膜壁の集中を追い得るようになった時期。
 
②治癒過程期(Healing stage)
H1:白苔は薄くなりはじめ、再生上皮が潰瘍内へせり出してきている。辺縁部から潰瘍底への粘膜の傾斜は緩やかになる。潰瘍としての粘膜欠損は明らかで潰瘍縁の線は明確に縁取られている時期。
H2:H1ステージの潰瘍面が更に縮小し、潰瘍のほとんどが再生上皮で覆われ、毛細血管集中像のみられる幅が白苔の幅より広くなった時期。
 
③瘢痕期(Scarring stage)
S1:白苔が消失し、潰瘍面が発赤調の再生上皮で覆われた時期。赤色瘢痕(red scar)とも呼ばれる。
S2:潰瘍面の再生上皮の発赤が消え、周囲粘膜と同様の色調か白色調になった時期。白色瘢痕(white scar)とも呼ばれる。
 
・潰瘍の深さによる分類(村上の分類)
 
 
  • 治療
全身状態がよく、出血・穿孔のリスクが低い症例では、原則として外来での薬物療法を行う。
内視鏡所見などから、合併症の危険性が高いと判断されれば、内視鏡的処置・絶食治療などを考慮する。
 
・薬物治療
PPIが第一選択。
 
防御因子増強薬(アルギン酸ナトリウム、アルロイドG®など)は明確なエビデンスはない。
 
・出血がある場合
全身状態の管理をした上で緊急内視鏡検査を行い、出血源の診断・出血状態の評価・必要に応じて内視鏡的止血術を行う。
出血性消化性潰瘍は活動性出血例と非出血性露出血管例が内視鏡的止血治療のよい適応(改変Forrest分類のⅠ及びⅡa)
 
改変Forrest分類
I.活動性出血 a.噴出性出血 b.湧出性出血
II.出血の痕跡を認める潰瘍 a.非出血性露出血管 b.血餅付着 c.黒色潰瘍底
III.きれいな潰瘍
 
内視鏡的に出血がコントロール出来ない場合は外科手術やIVRを考慮する。
 
・穿孔が疑われる場合は
腹腔内遊離ガス像の有無を確認する。不用意に造影X線検査や内視鏡検査を行わない。
経鼻胃管を挿入し保存的に治癒する例もあるが、全身状態・腹部所見などから、まずは手術の適応を十分に検討する。
 
・H.pylori陽性の場合
除菌治療を行う。潰瘍治癒及び再発抑制効果があるとされる。
 
・食事
急性期は絶食が推奨される。急性期は内視鏡的止血後48時間以内が妥当だが明確な定義なし。
 
食事の再開は止血の確認後に行うことが推奨される。
 
 
参考
消化器内科レジデントマニュアル
消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版)
消化器内科グリーンノート