消化器内科takoitaのメモ

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小腸閉塞の診断・治療

 
  • 成因による分類
・内因性(intrinsic lesion)
腫瘍・炎症性肥厚・先天閉鎖(小児)など

 

 
・外因性(腸管壁外、Extrinsic lesion)
癒着・バンドによる絞扼・内ヘルニア・腸重積・捻転など
 
・管腔内異物(Intraluminal bodies)
未消化の食餌・胆石・胃石・誤嚥した異物など
 
 
  • 形態による分類
・Single obstruction(一般にはsimple obstructionと表記される)
閉塞箇所が1箇所のもの。口側内容はドレナージ可能。
 
・Closed loop obstruction
閉塞箇所が2箇所以上。ドレナージ不能部分(closed loop)が存在する。
 
 
  • 診断
上記の「形態」→「成因」の順に考えるのが基本。
①Closed loop obstruction
外因性のみで発生する。ドレナージ不能部位があるので、原則手術適応と考えて良い。
更に絞扼があるならば緊急手術なので、絞扼か否かの判断が必要。
 
closed loopがあるならばバンドや内ヘルニア門などが必要となる。
それ自体を確認するのは難しく、closed loopと思ったら連続性を追い、口径差のある部位を見つける。反対側へ連続性を追い、もう一方の口径差のある部分を見つける。
その2部分が近ければバンドや内ヘルニアを疑い、明らかに離れていれば癒着など他の原因を考える。
 
また、絞扼を疑うCT副所見は、腸管の浮腫・造影効果低下・腸間膜浮腫(脂肪織濃度上昇)・腹水の存在、などがある。
 
②Single obstruction
・閉塞部位の腸管壁が肥厚→内因性
炎症などの消退するものならば待てばよいが、腫瘍性や繰り返す炎症などで不可逆的な狭窄を来しているならば手術が必要。
 
・閉塞部位の腸管壁が肥厚していない→外因性
腸重積ならば緊急手術。
癒着ならば保存治療可能。
多臓器による圧迫ならば原因検索。
 
・閉塞部位のすぐ口側にものがある→異物
食餌性ならば待てば通過する物もある。
待っても消化しないものなら手術。
 
③partial obstruction(不完全閉塞)
流入量に対して流出量の方が少ない状態。
代表疾患は放射線腸炎や腹膜播種。
保存治療によく反応する。
 
 
  • 検査
・血液検査
診断に有用ではないが、脱水の程度やそれに伴う電解質異常の有無が目的。
また、膵炎(膵酵素の上昇)などの鑑別の精査目的。
乳酸値の上昇は広範囲腸管虚血では感度90%特異度87%。しかし、虚血範囲が狭い場合や絞扼早期は上昇せず、正常でも絞扼を否定できない。
 
・単純X線検査
二ボー(鏡面形成像)は腸閉塞に特異的な所見ではない。
腸閉塞はある部位までは腸管が拡張しているが、その部分より先は拡張していない、というのが示唆する所見である。
小腸内にガスがあり拡張しているが大腸内にはガスはない、というのが多くはsingle obstruction。
しかし、closed loopではその限りではない。
 
・腹部CT
まず、形態について、閉塞部位(口径差のある部位)、閉塞部位の箇所、閉塞部位が複数なら近い(closed loopを示唆)か離れているか、などを考える。
次に、成因について、閉塞部位の腸管壁が肥厚していないか(内因性を示唆)、腹壁ヘルニアはないか、などを考える。
 
 
 
 
参考
ブラッシュアップ急性腹症第2版