消化器内科takoitaのメモ

消化器内科医takoitaのメモ

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食道静脈瘤に対する内視鏡治療(EIS、EVL)

 

  • 種類
内視鏡的硬化療法(EIS、Endoscopic injection sclerotherapy)
内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL、Endoscopic variceal ligation)
アルゴンプラズマ凝固法
 
  • EISの禁忌
高度黄疸例(Tbil>4.0)
高度の低アルブミン(Alb<2.5)
高度の血小板減少(Plt<2万)
全身の出血傾向(DIC)
大量の腹水貯留
高度脳症
高度の腎機能不良例
など
 
治療効果が原疾患の自然経過を上回ると判断される場合以外は適応とならない。
 
・使用薬剤
EO(5%ethanolamine oleate)の血管内注入法
AS(1%Aethoxysklerol)の血管外注入法
 
 
  • EO法
X線透視下に食道静脈瘤と供給路を芋づる式に閉塞する手技。
静脈瘤が複数ある場合は、最も形態の大きいものから穿刺する。
同じ形態であれば、発赤所見の高度なものから穿刺する。
なお、待機例では赤色栓や白色栓があれば、その静脈瘤から治療する。
 
穿刺部位は出来るだけEGJ近傍を選択する。
静脈瘤の形態に応じて穿刺針の太さ(20、23、25G)を選択する。
例として、F3は20G、F2は20または23G、F1は23または25G、F0は25Gを選択する。
F0−2は穿刺静脈瘤を7時に、F3は12時に固定して穿刺すると穿刺成功率は高くなる。
 
穿刺したらスコピストは決して画面から眼を離さず、硬化剤(EO)が血管外に漏れないように針先を血管内に保持する事に集中する。
第一助手は術者の指示に従いEOをゆっくり注入する。
第二助手は術者の指示に従いスコープを患者の口元で保持する。
第三助手はX線モニターをみて硬化剤がどこまで注入されているかを口頭で知らせる。
 
十分注入されたら投与を終了する。
門脈へはEOを注入してはならない。
門脈血栓や肝不全をきたしうる。
 
※時間差注入法
EOを供血路まで注入してもすぐに抜針せず、1〜2分待ってEOを再度注入する方法。
新たな供血路やPeri−vにも注入され、再発に関わる供給路を閉塞できる。
 
EO法は1回で可能な限り全ての静脈瘤に行うが、1回のEO総注入量は0.4ml/kg以内にする。
不完全なEOや残存した静脈瘤に対しては1週間後に追加治療する。
 
 
  • AS法
EO法後の血栓化静脈瘤の脱落と残存血管の消失を目的とする。
ASは1ヶ所に2mlずつ粘膜内に膨隆を形成するように注入する。
 
粘膜下層への注入は硬化剤が広く拡散するため効果がない、
筋層への体量注入は、縦隔炎や食道穿孔の危険性がある。
 
正常粘膜部位でのAS注入を避け、総量は20ml以内とする。
 
 
  • 地固め療法(APC)
・適応
再発例(再治療後も再再発をきたす可能性が高いため)
出血例や待機例は全て治療の適応。
治療抵抗例やアルコール性肝硬変例、肝癌合併例、EIS後のUIP所見例は適応となる。
 
・手技
EO・ASで静脈瘤が消失した時期に、APCを用いて下部食道粘膜を全周性に焼灼する。
高周波出力40W、アルゴン流量1.0l/min
 
全周性潰瘍を形成させて、粘膜〜粘膜下層を密な線維組織で置換する。
静脈瘤の発生母地を効果させて再発防止をはかる。
 
 
  • EVL
・適応
硬化剤が使用できないまたは望ましくない場合はEVL単独治療が適応となる。
EVL・AS併用療法は従来の硬下療法の適応と同一。
 
・手技
1本の静脈瘤に対し、EGJ直上とその約5cm口測
 
 
  • 緊急出血時
誤嚥防止やスコープ交換を容易にするためオーバーチューブを併用する。
 
6cmバルーンを装着しておけば、出血点を圧迫止血できる。
出血点を認めればバルーンで2ー3分圧迫し、一時止血をはかる。
出血が弱まれば一度スコープを抜去し、EVL用デバイスを装着する。
 
EVLにて結紮後は、他部位からの出血がないかを確認する。
呼吸・循環動態が安定していればx線透視下にEISを考慮。
ただし、血液検査で高度肝障害があればEISは行わない。
 
x線透視下EISでは、治療する静脈瘤を7時に移動させる。
6cmバルーンで血行遮断し、EGJ近傍で鋭角に穿刺する。
穿刺針は静脈瘤径に応じて20、23、25Gのいずれかを選択する。
 
穿刺後に造影剤添加硬化剤(EO)の入ったシリンジの陰圧をかけながら血液逆流を確認する。
その後、硬化剤を供血路の起始部まで注入する。
 
EOの総注入量は0.4ml/kg以内。
1内視鏡治療あたり20ml以内とする。
体量のEO注入は心原性ショックや腎不全などの原因となる。
ただし、適量でも低アルブミン血症(alb<2.5g/dl)では、EOの不活化が低下し溶血が起こりやすくなる。
その対策として術前のアルブミン補充とhaptoglobinの投与を行う。
 
 
 
参考
食道・胃静脈瘤 改訂第3版