頭痛の初期対応
まず、緊急性の高い二次性頭痛から鑑別に考える
-
問診
疼痛に対してのOPQRST-A。
O Onset
|
発症様式、突然発症・急性発症・緩徐発症
|
P Provocation/Paliation
|
増悪因子・寛解因子
|
Q Quantity/Quality
|
質・程度・痛みの性質
|
R Radiation
|
頸部・歯・眼への放散痛
|
Region
|
場所が全体か部分的か
|
S Severity
|
どの程度の痛みか
|
T Timecourse
|
経過、間欠的か持続的か、持続時間は?
|
A Association
|
随伴症状、嘔気・めまい・発熱など
|
二次性頭痛を疑う症状・所見としてSSNOOPが有名
Systemic symptoms/signs
|
発熱、るいそう、筋肉痛
|
Systemic disease
|
悪性腫瘍、AIDS
|
Neurologic symptoms of signs
|
神経局在所見
|
Onset sudden
|
雷鳴頭痛
|
Onset after 40 years
|
40歳以降初発の頭痛
|
Pattern change
|
増悪する頭痛、いつもと違う頭痛
|
-
red flag sign
①最悪②増悪③突発、がキーワード。これらがなければ少し安心。
突然発症、強い疼痛、初発、今までと異なる、徐々に増悪、5歳未満・50歳以上、神経学的異常あり、発熱や痙攣など全身症状を伴う、意識障害・意識消失を伴う、頸部痛・項部硬直を伴う、最近の頭部外傷歴あり、担癌患者・免疫不全患者・妊婦の初めての頭痛、などがred flag sign
-
クモ膜下出血の鑑別
最悪・増悪・突発、のいずれかに該当する場合は必ず鑑別として考える。
また、左右差のない意識障害として来院する事もある。
・問診
発症時に何をしていたかをはっきり述べれる程突然(Very sudden onset)。疼痛にて目がさめるのもsuddenに含める。
1分以内に疼痛のピークとなるのはクモ膜下出血の75%と言われる(雷鳴頭痛)。雷鳴様でなくても安易に否定しない。
リスク要因:喫煙、高血圧、過度の飲酒(エタノール150g/週以上)
・バイタル・身体所見
血圧高値や瞳孔の左右差が有用な所見。ただしなくても否定できない。
その他の所見は以下。
所見
|
頻度(%)
|
項部硬直
|
21-86%
|
痙攣
|
32%
|
精神状態の変容
|
29%
|
局在を示す神経徴候
|
13-36%
|
発熱
|
8%
|
眼底所見
|
2%
|
髄膜刺激症状は発症数時間以内では認めないことが多いとされる。
特異的な所見はなく身体所見のみでクモ膜下出血を否定する事は出来ないことに注意。
・検査
頭部CT:
時間経過
|
単純CTの感度
|
6時間
|
100%
|
24時間
|
95%
|
48時間
|
76%
|
3日
|
74%
|
1週間
|
50%
|
また、Pseudo-subarachnoid hemorrhageも考える必要はある。
・細菌性髄膜炎
・造影剤のクモ膜下腔への髄注
・高用量の静脈造影剤がクモ膜下腔に漏出
・びまん性脳浮腫(低酸素脳症など)
腰椎穿刺:
発症から12時間-2週間は感度100%と言われるが、肉眼では50%。taumatic tap(医原性血性髄液)となり診断に苦慮する事もある。
MRI・MRA:
微小出血の検索や動脈瘤の有無を判断できる。
T1やT2はCT以下の感度。FLAIRやT2starは発症から時間が経過するにつれて感度が高くなり有用である。
検査
|
1-3日の検出感度
|
4-14日の検出感度
|
CT
|
95%
|
75%
|
FLAIR
|
81%
|
87%
|
T2star
|
94%
|
100%
|
心電図:
90%で何かしらの異常があるらしい。ST変化があることもあり総合的に判断。
血液検査:
有用な項目はない。クモ膜下出血の28%でCK上昇があることを知っておく。
-
典型エピソードからの鑑別
・1分以内に最強となる頭痛(雷鳴様頭痛)
くも膜下出血:緊急度が高いため最重要
内頸/椎骨動脈解離
下垂体卒中:下垂体腫瘍内の出血により急激な視力障害,副腎不全を起こす
脳静脈洞血栓症
可逆性脳血管攣縮症侯群(RCVS):多数の脳動脈に可逆性の攣縮が起こる。妊娠や薬剤が原因となる
・徐々に始まる拍動性頭痛
早朝に、側頭部後頭部に、血圧上昇を伴って→高血圧性頭痛
・突発性激痛
睡眠中に、眼部前額部に、結膜充血鼻汁鼻閉流涙流涎Horner症候群を伴って→群発性頭痛
・電撃性頭痛
三叉神経領域に、食事会話歯磨き時に→三叉神経痛
後頭部→後頭神経痛
咽頭頸部耳外側部
食事会話で誘発→舌咽神経痛
-
その他
必ず救急外来では一次性頭痛と確定診断せずに疑いに留める!
また、薬物乱用頭痛を忘れない。その場合は鎮静薬の内服を中止する。
薬物乱用頭痛の診断基準
|
①頭痛は1月に15日以上存在する。
|
②1種類以上の急性期・対症的治療薬を3ヶ月を超えて定期的に乱用している。
|
③頭痛は薬物乱用により発現したか、著明に増悪している。
|
参考
救急外来診療中
デキレジ STEP1