消化器内科takoitaのメモ

消化器内科医takoitaのメモ

消化器内科医のメモ用ブログ 自分用のまとめなので記事が重複している場合があります。なにかご指摘や追加の情報あればご連絡ください。

意識障害患者に対する10の鉄則

  1. ABCの安定
  2. バイタル、病歴、身体所見が最重要。外傷検索、AMPLE聴取も大事
  3. 鑑別疾患の基本三角形
  4. 意識障害と意識消失を明確に区別
  5. 何が何でも低血糖の否定から。血ガスのチェックも。
  6. 脳出血か梗塞か
  7. 菌血症・敗血症が疑われたらfever work up
  8. アルコール(エタノール)、肝性脳症、電解質異常、薬物中毒、精神疾患による意識障害は除外診断
  9. 疑わないと診断できない。AIUEOTIPS
  10. 原因は1つとは限らない。確定診断までは安心しない。

     

 
①ABC
JCS/GCSによる評価。
気管挿管・人工呼吸の適応は以下
1.意識障害により気道が確保できない(GCS<8)
2.ショックバイタルを呈する
3.高二酸化血症を伴う呼吸不全
4.低酸素性呼吸不全
5.呼吸仕事量を維持できない
 
②バイタル/病歴/身体所見
突然発症、収縮期血圧高値、瞳孔所見異常では頭蓋内病変の可能性が高くなる。逆に血圧低めなら安易に脳卒中と考えてはいけない。
 
低血糖単独でショックなし。低血糖単独による意識障害は意識以外のバイタルは安定していることが多く、ショックでは他疾患に随伴する低血糖を考えなければならない。
 
痙攣でも意識障害はおこる。目撃者がいないと診断が難しく、目撃者を探すこと。
 
瞳孔所見は重要。極端な縮瞳では①脳幹出血/梗塞②麻薬(モルヒネ/アヘン)③有機リン中毒がある。
アルコールや睡眠薬でも縮瞳は起こりうる。頭位変換眼球反射が陰性(人形の目反応)ならば脳幹部の病変を考える。気管挿管が必要となりうるため。
 
AMPLE history
Allergy/ADL:アレルギー/ADL
Medication:内服薬
Past history/Pregnancy:既往歴/妊娠
Last meal:最後の食事
Event/Environment:出来事/環境
 
左右差が脳卒中では大事。通常は四肢麻痺や感覚障害は左右差が生じるのが通常。
左右差が下記のものなどを考える。①クモ膜下出血低血糖③急性薬物中毒が挙げられる。他には髄膜炎や両側の慢性硬膜下血腫など。
 
皮膚所見も重要。冷汗を認めれば低血糖心筋梗塞、ショックなどを疑う。
 
③鑑別疾患の三角
緊急性・簡便性・検査前確率を考えておかねばならない。
 
意識障害と意識消失を明確に区別
原因やアプローチも変わってくる。
普段の意識状態と今が同じか違うかを常に意識する。
 
低血糖の否定、血ガス
低血糖は速やかに診断でき緊急性も高い。
DM患者でインスリンやSU剤を使用している患者では注意。他には胃切除後、アルコール中毒、担癌患者、寝たきり患者はリスクが高い。
 
確定診断にはWhippleの3徴
1.低血糖と矛盾しない症状
2.適切な方法で測定された血漿Glu濃度の低値
3.血漿Glu濃度が上昇した際の症状の改善
 
持続する低血糖では持後型インスリンやSU薬剤の他に敗血症、肝硬変、アルコール、副腎不全、下垂体機能不全、ダンピング症候群、インスリノーマを考える。
 
ビタミンB1欠乏が疑われる患者にはビタミンB1の投与を忘れずに。
 
上記は病歴・身体所見だけでは100%診断はできない。ある程度で頭部CTへ。出血と梗塞で治療がぜんぜん異なる。
頭蓋内疾患では通常血圧は上昇するがクモ膜下出血は注意。たこつぼ型心筋症や神経原性肺水腫を合併しやすく、血圧は正常からやや低いこともある。
また、大動脈解離は脳卒中が疑われた際に考えておかねばならない。
 
⑦菌血症/敗血症のfever work up
髄膜炎脳炎などの中枢神経系感染症だけでなく、高齢者では肺炎や尿路感染症などでも発熱の影響もあり意識障害は起きうる。
菌血症は血中に菌がいるもの。(血培陽性になるもの)悪寒戦慄で可能性が高いといわれる。
敗血症は感染症の存在が証明又は疑われ全身性炎症反応症候群の項目を満たすもの。
 
⑧アルコール/肝性脳症/電解質異常/薬物中毒/精神疾患による意識障害は除外診断
鉄則に乗っ取り低血糖や肝性脳症を否定してから。
 
アルコールでは推定アルコール濃度を測定してみる。血中濃度200mg/dl以下ならば別の原因を考える。
 
肝性脳症に関しても同様。
アンモニア値と意識の程度は相関しない。
また羽ばたき振戦のみでは根拠とならない。羽ばたき振戦は代謝性脳症で最も多い。尿毒症や低血糖、低K血症、低Mg血症などの電解質異常、フェニトインなどの薬物中毒でも認める。
 
電解質異常によるもの
低ナトリウム血症は頻度も多く意識障害の原因となりうる。数値も重要だが急性か慢性かも大事。一般に慢性では意識障害は起こりづらいと考えられる。治療介入する場合、経過が不明のものは慢性として扱う。浸透圧性脱髄症候群には注意が必要なため。
 
薬物中毒
内服薬が判明している場合の裏付けや原因検索としてトライエージDOAは診断の補助として有用。検出不能薬剤がある、服用直後では検出されないことがある、常用量でも陽性となりうる(麻黄配合の感冒剤でアンフェタミン偽陽性、鎮咳薬でオピオイド陽性)ので注意が必要。あくまで補助。
 
うつ病統合失調症患者でも鉄則に従って
 
⑨AIUEOTIPS
別ページにて
 
⑩原因は1つとは限らない
特に老人
 
 
参考
救急外来ただいま診療中