感染性肝嚢胞の診断と治療
- 病態
肝嚢胞自体は経過観察とされる事が多いが、感染や出血を合併すると治療適応となる。
感染経路は、胆道系・門脈系・血行性・近隣の感染巣からの直接波及・外傷性が知られる。総胆管結石による逆行性胆管炎により感染性肝嚢胞を引き起こした報告例もある。
起因菌は、大腸菌・肺炎桿菌などのGNRが多い。
- 診断
・CT
嚢胞内部のCT値上昇、鏡面像形成、内部ガス像、嚢胞壁周囲の造影効果が特徴的とされる。
嚢胞増大も診断の一助となる。
・腹部エコー
嚢胞内部のエコー上昇やdebrisを認める
交通胆管の診断法
・PTAD造影
嚢胞内容積が減少するまでの期間待たなければ、肝内胆管と嚢胞内の圧較差から診断感度が下がると考えられる。
・ERCP下造影
上記に加えてERCP下造影を行う事で診断感度を上げる事が可能となる。
・直接胆道造影直後のCT
・DIC-CT
・MRCP
・胆道シンチグラフィー
・術中造影(ICG蛍光法)
- 治療
・抗生剤
・PTAD(経皮経肝膿瘍ドレナージ)
抗生剤のみで治療困難な場合に要する事が多い。
また、多発肝嚢胞にて感染した肝嚢胞を特定できない場合や胆道系との交通が強く認められる場合は、ERCPやPTCを施行すべきとの報告がある
最近では、EUSガイド下ドレナージの報告もある。
・エタノール及びミノサイクリン注入。
ドレナージ後に、無水エタノールや塩酸ミノサイクリンの注入が有効との報告もある。
しかし、胆道系と嚢胞に交通がある場合はエタノールにより胆管壁細胞壊死や硬化性胆管炎を生じる可能性がある。
施行前に、交通胆管を確認しておくことが重要となる。
・外科治療
外科治療適応としては、再発例、交通胆管併存症例、嚢胞破裂による腹膜炎合併例、多発性嚢胞疾患でドレナージ困難例など。
嚢胞開窓術や肝切除術の報告がある。
交通胆管の外科的治療法に関しては、術中直接縫合閉鎖や肝切除などの報告がある。
参考
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tando/32/4/32_782/_pdf/-char/ja