人工呼吸器離脱
プロトコル(https://www.jsicm.org/pdf/kokyuki_ridatsu1503a.pdf)に従うと
SAT開始安全基準
↓
SAT実施
↓
SAT成功基準
↓
SBT開始安全基準
↓
SBT実施
↓
SBT成功基準
↓
抜管の検討
- SAT:Spontaneous Awakening Trial
自発覚醒トライアルの事。30分~4時間で評価する。
・開始基準
SAT開始安全基準以下の事項に該当しない
興奮状態が持続し、鎮静薬の投与量が増加している
筋弛緩薬を使用している
24時間以内の新たな不整脈や心筋虚血の徴候
痙攣、アルコール離脱症状のため鎮静薬を持続投与中
頭蓋内圧の上昇
医師の判断
・やり方
全ての鎮静薬と鎮痛薬の使用を中断する•鎮痛薬が必要な痛みには継続して投与する•30分~最大4時間監視し評価する
・成功基準
①RASS:-1~0
②鎮静薬を中止して30分以上過ぎても次の状態とならない
興奮状態
持続的な不安状態
鎮痛薬を投与しても痛みをコントロールできない
頻呼吸(呼吸数≧35回/分、5分間以上)
SpO2<90%が持続し対応が必要
新たな不整脈
①②ともにクリアできた場合を「成功」
- SBT:Spontaneous breathing trial
自白呼吸トライアル。30分から2時間で評価する。
人工呼吸器から離脱しても自力で呼吸できるのかを評価するのが目的。挿管したまま人工呼吸器を外した状態と同じような状況にする。
SBTを行うかどうかには原疾患のコントロール、意識、循環、酸素化(高いFiO2やPEEPが必要な患者は人工呼吸器からの離脱難しい)が重要。
・SBT開始安全基準
①酸素化が十分である
FIO2≦0.5かつPEEP≦8cmH2OのもとでSpO2>90%
②血行動態が安定している
心拍数≦140bpm
昇圧薬の使用について少量は許容する(DOA≦5μg/kg/minDOB≦5μg/kg/min、NAD≦0.05μg/kg/min)
③十分な吸気努力がある
1回換気量>5ml/kg
分時換気量<15L/分
Rapid shallow breathing index(1分間の呼吸回数/1回換気量L)<105/min/L
呼吸性アシドーシスがない(pH>7.25)
④異常呼吸パターンを認めない
呼吸補助筋の過剰な使用がない
シーソー呼吸(奇異性呼吸)がない
⑤全身状態が安定している
発熱がない
重篤な貧血を認めない
重篤な体液過剰を認めない
①~⑤をすべてクリアした場合「SBT実施可能」
・SBT成功基準
呼吸数<30回/分
開始前と比べて明らかな低下がない(たとえばSpO2≧94%、PaO2≧70mmHg)
心拍数<140bpm、新たな不整脈や心筋虚血の徴候を認めない
過度の血圧上昇を認めない以下の呼吸促迫の徴候を認めない(SBT前の状態と比較する):①呼吸補助筋の過剰な使用がない②シーソー呼吸(奇異性呼吸)③冷汗④重度の呼吸困難感・不安感・不穏状態
- 人工呼吸器離脱と抜管
なお、人工呼吸器離脱と抜管は異なる。
抜管の適応は気道が確保できる事である。
・気道が保護できる
・上気道閉塞がない
・気道分泌物を喀出できる(喀痰が減り、咳嗽が十分できる)
抜管後は適宜血ガスをとって、抜管前の血ガスと比較し、酸素化や換気の悪化がないかをみる。
抜管時は必ず再挿管の器具や吸引器具を近くにおいておく。
また、抜管する際は朝に経管栄養を止めておく(嘔吐・誤嚥のリスク低下)。
- その他
ウィーニング困難例へ
肺水腫・過剰輸液による肺のコンプライアンス低下による呼吸仕事量増加が原因の場合、利尿薬や輸液の変更を考慮。
腹部外傷による腹圧上昇が原因の場合、開腹減圧術を考慮。
喀痰の貯留や無気肺・胸水による気道抵抗の増加・死腔の増加の場合、気道内吸引や去痰薬や体位ドレナージや胸水穿刺などを考慮。
・RSBI(rapid shallow breathing index:浅呼吸指数)
換気補助と酸素化補助を中止して1分後に測定した、呼吸数÷1回換気量(L)
100以下ならば離脱成功の可能性は高い
・P0.1(Pポイントワン)
気道を閉塞した状態で最初の吸気時間0.1秒に認められる気道内圧の変化
この数値が6cmH2O以下の際に離脱成功の可能性が高い
この数値が大きいということは、換気のために大きな呼吸努力が必要とされるということ。
参考
https://www.jsicm.org/publication/kokyuki_ridatsu1503.html
https://www.jikeimasuika.jp/icu_st/171010.pdf
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