人工呼吸器の設定とモード
人工呼吸器の設定などについて記載する。
- 1回換気量の設定
多いほどPaCO2を低下させれる。
理想体重1kgあたり6-8mlにて設定。(実体重ではないため注意)
理想体重の計算式
男性:50+0.9×〔身長(cm)-152〕
女性:45.5+0.9×〔身長(cm)-152〕
- 呼吸回数の設定
多いほど分時換気量が増えPaCO2を低下させれる。
基本的には呼吸回数はPaCO2に応じて調節するが、疾患などでも変わる。
ARDSでは1回換気量を少なくするため呼吸回数の設定を30回/分以上にすることがある。
閉塞性肺疾患では呼吸時間を長く取るため呼吸回数を低めに設定する。
目安
- 吸入酸素濃度(FiO2)
PaO2を改善させるためには酸素濃度を上昇させると良い。
ただし、酸素毒性や吸収性無気肺を起こす危険性があり、必要以上に高いFiO2を使用することは避けなければならない。
病的なシャント(ARDSなど)がある場合はFiO2ではPaO2は改善しない。
・P/F比について
FiO2の値でPaO2は変化し、どの状況が一番酸素化が良いかわかりにくい。
そのため、P/F比を計算する事で酸素化を評価できる(PEEPのも影響されるので絶対的指標ではない)。
- PEEP(呼気終末陽圧)
PaO2を上げるためのもう一つの方法となる。
PEEP=0cmH2Oでは大気圧と同じになる。
コンプライアンスの低下している肺では、肺が縮まろうとする力が強いため呼気の終わりに虚脱する肺胞が増える。その分肺胞は酸素を受け取れなくなるため、虚脱した肺胞を広げれる(肺
リクルートメント)。
- A/Cモード
調節呼吸(Control)とは自発呼吸と関係なく行う呼吸。
補助呼吸(Assist)とは自発呼吸に合わせて行う呼吸。
A/C(補助・調節呼吸)は自発呼吸に合わせて補助を行い、設定回数より少ない分だけ調節呼吸を行う。
設定呼吸回数以上の自発呼吸も補助換気を行う。
患者の呼吸仕事量が最も少なくなる設定であり、急性期の呼吸管理に適している。
・従量式(volume controlled ventilation)
一回換気量・呼吸回数・吸入酸素濃度・PEEP・トリガー感度・吸入流量の6つが設定項目。
換気の項目:一回換気量・呼吸回数
酸素化の項目:吸入酸素濃度・PEEP
同調性の項目:トリガー感度・吸入流量
吸気圧は患者の肺の状態によって異なる。そのため圧をモニターする。気道抵抗上昇時やコンプライアンス低下時は、吸気圧が高くなる。
・従圧式(pressure controlled ventilation)
吸気圧・呼吸回数・吸入酸素濃度・PEEP・トリガー感度・吸気時間の6項目。
吸気圧は1回換気量をみながら調節する。
吸気時間は吸気流量が0に下がるまでを目安に決める。
- PSモード(プレッシャーサポート)
pressure support
自発呼吸努力の間のみ設定した陽圧がかかる。
吸気ごとに同じ圧がかかる。
吸い始め・吸い終わりは患者自身が決める。
- SIMVモード
synchronized intermittent mandatory ventilationのこと。同期式間欠的強制換気。
患者の自発呼吸回数が設定呼吸回数より少ない場合はA/Cと同様。
設定呼吸回数以上の自発呼吸は自発呼吸のみで補助は行わない。
呼吸回数を多く設定すれば患者の呼吸仕事量は減り、多く設定すれば呼吸仕事量は増大する。
なので、急性期では患者の呼吸普段を軽減できるように十分な呼吸回数の設定が必要。
- CPAPモード
自発呼吸のみのモード。
呼吸停止や薬物中毒などで呼吸回数が低下している場合には使用してはいけない。
参考
呼吸整理がわかる、好きになる