肺塞栓症を疑う時
巨大血栓による塞栓ならば胸痛・失神・呼吸苦などの症状も起こるが、典型的な症状が起こらない場合も存在する
重大な疾患であるが造影CTを撮るかに苦慮する例も多い
その場合の参考となるものを
- 有名なmodified wells criteria
- DVTの症状・身体所見(3点)
- 肺塞栓以外の可能性低い(3点)
- 心拍数>100(1.5点)
- 3日以上の臥床または4週以内の手術歴(1.5点)
- 肺塞栓またはDVTの既往(1.5点)
- 喀血(1点)
- 悪性腫瘍(1点)
以上の7項目
4点以下でd-dimer陰性ならPEは否定的(偽陰性率0.5%)
4点より高いなら造影CTにて精査
4点以下でもd-dimer陽性なら造影CTにて精査
(造影CT陰性の場合の偽陰性率1.3%)
2)の肺塞栓症以外の可能性が低いという項目が使いにくいので他も紹介
- 改訂版ジュネーブスコア(revised Geneva score)
- 66歳以上(1点)
- 肺塞栓または深部静脈血栓塞栓症の既往(3点)
- 1カ月以内の手術・骨折(2点)
- 活動性の癌(2点)
- 一側の下肢痛(3点)
- 血痰・喀血(2点)
- 心拍数(75~94回/分)(3点)
- 心拍数(95回/分以上)(5点)
- 下肢深部静脈拍動を伴う痛みと浮腫(4点)
0–3点で8%
4–10点で28%
11点以上で74%
(1)〜(4)までがriskの評価
(5)〜(6)までが症状の評価
(7)〜(9)までが診察の評価となる
- d−dimer
また、d–dimerは特異度は高くないが感度は高いため、否定の材料として使うべきである
年齢調整d–dimerという考えもある
50歳未満ではカットオフを500μg/L
50歳以上では年齢を10倍した値(年齢×10μg/L)をカットオフ
wells4点以下とd-dimer<500で陰性的中率100%
rGeneva3点以下とd-dimer<500で陰性的中率100%というデータもある
造影CTを行わない基準の一助となる
- PEの場合の心電図変化所見を以下に示す
- V1-V4のT波の陰転化は68%
- S1Q3T3は50%
- 低電位は29%
- 洞性頻脈(HR>100)は36%
- 完全又は不完全右脚ブロックは22%
- 肺性P波は5%
- 正常9%
- 心エコー検査の所見については
胸骨左縁長軸像において
右室径>25mmの場合 感度70% 特異度87%
右室径/左室径>0.5の場合 感度85% 特異度78%
胸骨左縁短軸像において
心室中隔平坦化によるD shapeや三日月化の場合 感度40% 特異度90%
- PERC rule
上記スコアなどにて低リスクと判断した場合、感度が高い除外基準があるらしく、参考までに
・50歳未満
・HR<100回/分
・SpO2>94%
・片側の下肢腫脹なし
・血痰なし
・4週間以内の手術・外傷なし
・肺塞栓や深部静脈血栓症の既往なし
・エストロゲン製剤の使用なし
全て当てはまれば検査前確率1%未満
参考
http://www.marianna-u.ac.jp/dbps_data/_material_/ikyoku/20170704Nagino.pdf
ERのtips
研修医当直御法度百例帖第二版
デキレジ STEP1