消化器内科takoitaのメモ

消化器内科医takoitaのメモ

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脂肪肝について

  • 病態

定義「何らかの代謝異常のため、肝小葉の1/3以上の領域で、肝細胞に著明な脂肪滴の蓄積を認め、それ以外の形態学的異常を認めないもの」

 

  • 原因

多彩。

多くは中性脂肪合成亢進によるもので、肥満や糖尿病などの生活習慣病、アルコール多量摂取、内分泌異常(Cushing症候群など)、長期の中心静脈栄養、薬剤(化学療法、ステロイドなど)などが原因。

膵頭十二指腸切除術後には、強い脂肪肝を認める事がある。インスリン分泌阻害などによると考えられている。

Reye症候群、テトラサイクリン中毒、急性妊娠脂肪肝は主に中性脂肪分解阻害によるもので重篤であり、肝不全を合併する。

  • 分類

アルコール性と非アルコール性に分類される。

肝障害を惹起する程度の飲酒歴がなく、ウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎など原因の明らかな物を除外した肝への脂肪沈着を認める肝疾患を非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)という。

近年増加が懸念されている。

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、NAFLDの重症型で、肝硬変から肝細胞癌へ進展しうる。

大部分のNAFLDは肥満、糖尿病、高インスリン血症、脂質異常症を伴っている。肝臓におけるメタボリックシンドロームの表現型と考えられている。

・CT

判定には、CTでは肝内血管の描出度や脾とのCT値比較が用いられている。

Leeらは5段階に分けて分類している。

軽度ではMRIのT1強調像でin-phaseとopposed-phaseを撮影が必要となる。

・まだら脂肪肝あるいは限局性脂肪肝

脂肪沈着が肝全体に均一に分布するのでなく、区域性に広がる区域性脂肪肝や全体的に不均一な地図状などに観察されるまだら脂肪肝がある。

肝内の一部分に限局して脂肪沈着が観察される場合は限局性脂肪肝という。

診断は比較的容易だが、結節性脂肪肝はCTで低吸収を呈し、特に多発性の場合は肝転移などとの鑑別が必要。

まだら脂肪肝が楔状~不整形を呈し肝梗塞と鑑別が必要となる場合もある。

なお、脂肪が証明できても結節状や類円形~腫瘤様では脂肪成分を有する肝腫瘍(肝細胞癌、肝腺腫、肝血管筋脂肪腫および骨髄脂肪腫など)との鑑別は必要となる。

・限局性非脂肪沈着

肝左葉内側区(S4)背側部や胆嚢周囲、S4鎌状間膜付着部周辺、肝左葉外側区背側部などの部位に生じやすい。

流入血成分の差が脂肪沈着の不均一を引き起こす一因と考えられている。

鑑別のポイントは、好発部位の把握と、その他の部位の脂肪沈着の証明。

ただし、非脂肪沈着は腫瘍周囲にも生じるため、内部に腫瘍が隠れていないか注意が必要。

・妊娠急性脂肪肝(AFLP)

1/10000の頻度で稀。

症状は劇症型で、早期の診断と適切な治療が行われなければ母児共に予後不良の事が多い。

発症時期は通常妊娠後期~末期。産後もありうる。

本症は小滴性であり、画像での診断は30~50%と少ないことに注意が必要。

症状は急速に悪化するため、診断がつき次第可及的早期に帝王切開などで妊娠終了を図るのが通常である。

参考

肝胆膵の画像診断-CT・MRIを中心に-