膵腫瘤の鑑別と診断
- 充実性腫瘍
最も頻度の高い充実性腫瘍は膵癌。大半は乏血性。
慢性膵炎や自己免疫性膵炎も限局性の乏血性腫瘤を形成し、膵癌との鑑別が問題となりうる。
また、膵島腫瘍、SPNは多血性の事も多いが乏血性のこともある。
肺癌などの転移は乏血性の充実性の腫瘤を形成する。
・鑑別
①腫瘍性
膵癌
内分泌腫瘍
転移
SPN
②炎症性
腫瘤形成性膵炎
膵膿瘍
・多血性腫瘤
膵癌は通常乏血性のため、多血性腫瘤(造影CTで膵よりも濃染される)は鑑別が異なる。
①動脈相から濃染
Insulinoma
膵転移(腎癌、乳癌、悪性黒色腫など)
漿液性嚢胞腫瘍 microcystic type, solid variant
膵内副脾
動静脈奇形、脾動脈瘤
②膵実質相で最大濃染
SPN
腺房細胞癌
膵内分泌腫瘍
悪性黒色腫などの膵転移
- 膵嚢胞性疾患
頻度的には大部分は仮性嚢胞、次いで貯留嚢胞である。
単房性か多房性か、充実部分はあるか、壁不整はあるか、膵管と交通があり膵管の拡張を伴っているか、が重要である。
・単房性嚢胞
多くの仮性嚢胞及び充実性嚢胞の変性したものは単房性。
もし膵管が拡張していれば膵炎ベースが考えられ、仮性嚢胞や癌に伴う嚢胞のことが多い。
一方、仮性嚢胞でも部位によっては膵管の拡張を伴わない。
また、先天性嚢胞や貯留嚢胞、充実性腫瘍の変性は主膵管の拡張を伴わない事が多い。
その他、稀な単房性腫瘍として、IPMN、unilocular SCN、lymphoepithelial cystが報告されている。
膵内に単房性嚢胞が多発する場合は膵炎後の仮性嚢胞の頻度が高く、polycystic diseaseやvon-Hippel Lindau病、cyctic fibrosisなどに伴う遺伝性の嚢胞でも多発する。
また、IPMNでも嚢胞が多発する事がある。
・多房性嚢胞
多房性嚢胞は多くの場合、嚢胞性腫瘍である。
小嚢胞が集簇している場合は、SCNとIPMN分枝型を考える。
大小嚢胞の多発には、MCN、IPMN分枝型、macrocystic typeのSCNが鑑別に挙がる。
・膵管との交通性
MRCPやERCPで確認される。MRCPでは交通を証明する事は困難な事も多い。
膵炎後の仮性嚢胞やIPMNが鑑別に挙がる。
一方、MCNやSCNが膵管と交通することは稀。
・膵嚢胞の分類
- 仮性嚢胞
膵炎後、外傷性、二次性、特発性
- 真性嚢胞
先天性
単純性、貯留性
過形成性
寄生虫性
- 嚢胞性腫瘍
SCN、MCN、IPMN、リンパ管腫、血管腫、膵内副脾に発生した嚢胞(リンパ上皮嚢胞、類表皮嚢胞)
- 壊死性腫瘍
SPN、膵内分泌腫瘍、膵癌(粘液癌、退行性癌)、肉腫、転移(腎癌、悪性黒色腫、肺癌など)
参考