十二指腸リンパ腫の診断と治療
- 病態
十二指腸では濾胞性リンパ腫(FL;follicular lymphoma)が最も多く過半数を占める。
以降は、DLBCL、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL;mantle cell lymphoma)の順となる。
- 診断
・内視鏡
十二指腸下行脚を中心に白色小顆粒をびまん性に認めた場合は、FLを疑う。
MLP様(multiple lymphomatous polyposis)所見の場合は、MCLを疑う。
耳介様所見、潰瘍型の場合は、DLBCLを疑う。
FL:
・病理
HE及び免疫染色で評価する。
悪性リンパ腫は非上皮性の腫瘍であり、生検は粘膜浅層だけの標本では診断を誤る可能性があり、深部まで十分に組織を採取する必要がある。
- 治療
・FL
腫瘍の増大速度は遅く、比較的緩徐な経過をたどる。
十二指腸下行脚に最も多い。
小腸全体など広範囲に存在しうり、FL診断時は上部・大腸内視鏡以外に小腸内視鏡検査も行っておく事が必要である。
肉眼所見からの鑑別はリンパ管拡張、リンパ管腫、十二指腸炎など。
進行期の節性FLに対する治療は化学療法が一般的であったが、予後の規定はDLBCLへの転化であり、進行期症例に対しても腫瘍増大による圧迫症状出現時まではwatch and waitがとられる事が多くなってきている。
経過観察中に新規病変出現、特に様相の異なる病変が出現した場合は、転化の可能性を疑い積極的に生検を行う必要がある。
・DLBCL
十二指腸のDLBCLの頻度は胃・腸と比較すると低い。
de novo発生のものと、MALTリンパ腫やFLから転化したものとがある。
de novo発生のものには、胚中心B細胞に類似するGCBタイプと活性化B細胞に類似するABC(activated B細胞)タイプがある。
十二指腸ではGCB型が多く、ABC型の肉眼型はすべて潰瘍型であるが、GCB型では潰瘍型・隆起型・混在型など多彩であった。
治療はR-CHOP療法。
・MALTリンパ腫
十二指腸球部では隆起性病変が多く、H.pylori除菌に反応する例も多いため、多くの胃MALTリンパ腫と同様の機序で発生していると思われる。
一方、十二指腸下行脚以深の病変では、白色顆粒状隆起を呈するものが多く、除菌療法にも反応しにくいとしている。
・MCL
参考
胃と腸 53(12):1587-1594,2018