消化器内科takoitaのメモ

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宿便性潰瘍の診断と治療

 
  • 病態
大腸内に停留した糞便塊の圧迫による血流障害により生じる褥瘡潰瘍。
直腸~S状結腸に好発する。

 

潰瘍の形態は単発あるいは多発の不整形地図状潰瘍。周辺粘膜との境界は比較的明瞭で潰瘍周囲の隆起や炎症を認めないのが特徴である。
 
発症背景には、心不全などの循環不全、慢性腎不全、脳卒中、大腿骨頸部骨折など、高齢の長期臥床者に好発する。
 
  • 症状
便秘の症状が先行する。
高度の便秘の後に突然生じる無痛性の新鮮血便が特徴である。
 
  • 鑑別
・急性出血性直腸潰瘍(AHRU)との鑑別
臨床症状が類似する。
AHRUは歯状線に接して輪状あるいは輪状配列する潰瘍が特徴。
宿便性潰瘍は歯状線近傍には発生しないこと、宿便性潰瘍は潰瘍の形状が糞便塊に類似し便秘の症状が先行することから鑑別できる。
 
・粘膜脱症候群(MPS)の潰瘍型との鑑別
MPSは潰瘍時の過度ないきみなど、消化管粘膜の逸脱、重積による慢性的機械的刺激や虚血性変化によって形成される。
MPSの潰瘍型は、歯状線からやや離れた部位の直腸・Houston弁の前壁~右側に好発する。
病変の主体は潰瘍だが、潰瘍は浅く平坦であり、その辺縁は明瞭で周堤様の隆起や粘膜下腫瘍様の所見を伴う病変もあり、これらの所見で鑑別できる。
 
  • 治療
排便コントロールが重要だが、出血症例では内視鏡的に露出血管が確認されれば内視鏡的止血が第一選択。
タンポナーデや用手的圧迫はあまり有効ではない。
穿孔例では緊急手術の適応である。
 
 
参考
胃と腸 53(7)2018