消化器内科takoitaのメモ

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葉酸欠乏症の病態と治療

 
  • 病態
葉酸ビタミンB12とともに、ピリミジン合成に必要な補酵素として作用するメチレンテトラヒドロ葉酸(THF)の産生に関わっている。
そのため、欠乏するとDNA合成障害が起こる。

 

巨赤芽球性貧血の本態は、DNA合成障害により生じた異常血球が骨髄内で破壊される無効造血である。
汎血球減少、LDH著増に加え、巨大好中球や過分葉好中球などの形態異常をきたし、骨髄では成熟の悪い大型の核を持つ赤芽球(巨赤芽球性変化)も出現する。
そのため、骨髄異形成症候群や急性白血病と間違えられることもある。
 
葉酸欠乏の原因としては、アルコール、摂取不足、吸収障害、需要増大(授乳、溶血など)、薬剤などがあげられる。
葉酸は主に肝臓に約7.5mg程度蓄えられているが、健常人でも便中に1日約200㎍排泄されるため、供給が途絶えれば約2~3か月で枯渇する。
ただし、通常は食事中の葉酸含有量は排泄量の数倍あるため、摂取不足のみで葉酸欠乏となることはまれである。
 
また、ビタミンB12が胃壁細胞から分泌される内因子と結合し、回腸末端から吸収されるという単一のシステムなのに対し、葉酸は上部小腸、回腸で複数のシステムで吸収される。
そのため、吸収障害で葉酸欠乏となることが、広範な部位で吸収障害をきたす疾患に限られるため、多くはない。
 
実際にはアルコール+摂取不足など複数の病因が関係していることが多い。
アルコールは直接腸管細胞を傷害するため葉酸の吸収障害を起こし、さらに食事摂取量自体も低下するため組織中の葉酸が低下する。
 
ちなみに、鉄欠乏も合併すると骨髄中の巨赤芽球性変化は目立たなくなり、MCVも上昇しないことがある。
鉄欠乏マーカーのFe、TIBC、フェリチンも典型的な値とならず、葉酸補充で安定した後に検査値が正味の値となる。
 
  • 検査値
血清葉酸値は摂取葉酸値の影響を直接受けるため、組織中の葉酸を正確には反映しない事に注意。
 
葉酸欠乏の定義は血清葉酸値<2.5ng/mLである。
しかし、2.5~5.0ng/mLでも葉酸欠乏の症状を呈することもある。
溶血で血球中の葉酸が放出され見かけ上高値となることもありえる。
 
大酒家は健常人と比較して有意に血清ビタミンB12が見かけ上高値となるため注意。
真のビタミンB12欠乏があっても測定値が低値を示さない例もある。
 
  • 治療
ビタミンB12欠乏時の葉酸補充は、ビタミンB12欠乏による神経障害の顕在化や悪化を認める可能性があるため禁忌。
しかし、前述のとおりビタミンB12は測定値上は低値とならない場合もある。
 
実臨床では、大酒家の葉酸欠乏が疑われる巨赤芽球性貧血を認めた場合は、ビタミンB12を先行投与または葉酸と同時投与が無難。
葉酸単独投与でも、ビタミンB12欠乏併存の可能性を念頭に置き、神経障害の発症に注意が必要。
 
 
 
参考
血液診療をスッキリまとめました