消化器内科takoitaのメモ

消化器内科医takoitaのメモ

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胃癌の治療方針

内視鏡的切除の適応

 

①絶対適応病変
EMR/ESD適応
2cm以下の肉眼的粘膜内癌 (cT1a)、分化型癌、UL0、と判断される病変。
ESD適応
2cmを超える肉眼的粘膜内癌 (cT1a)、分化型癌、UL0、と判断される病変。
3cm以下の肉眼的粘膜内癌 (cT1a)、分化型癌、UL1、と判断される病変。
 
②適応拡大病変
2cm以下の肉眼的粘膜内癌 (cT1a)、未分化型癌、UL0、と判断される病変。
 
遺残再発病変では、初回ESD/EMR時が絶対適応病変で、その後に粘膜内癌で局所再発した病変であれば、適応拡大病変として取り扱う事が可能。
 
③相対適応病変
上記以外の病変の標準治療は外科的胃切除だが、年齢や併存症などで手術し難い早期胃癌の場合は、推定されるリンパ節転移率などを考慮しつつ、内視鏡的切除が選択される場合がありうる。
 
内視鏡的切除の根治性
局所の切除度とリンパ節転移の可能性で決定される。
eCureA:
腫瘍が一括切除され、
①UL0の場合、腫瘍径を問わず、分化型癌優位でpT1a、HM0、VM0、Ly0、V0(ただし、未分化型成分が直径で2cmを超えるものはC-2とする)
②UL1の場合、3cm以下の分化型癌優位でpT1a、HM0、VM0、Ly0、V0
であること。
 
eCuraB:
腫瘍が一括切除され、
①UL0で、2cm以下の未分化型癌優位でpT1a、HM0、VM0、Ly0、V0
②3cm以下の分化型癌優位でpT1b(SM1)(粘膜筋板から500μm未満)、HM0、VM0、Ly0、V0(ただし、SM浸潤部に未分化型成分があるものはC-2とする)
であること。
 
eCuraC:
上記のA,Bに当てはまらないもの。
①C-1
分化型癌の一括切除で側方断端または分割切除のみが内視鏡的根治度A,Bの基準から外れる場合
②C-2
上記、A,B,C-1に当てはまらないもの。
 
内視鏡的切除後の治療方針
①eCuraA
年に1~2回の内視鏡検査による経過観察。
また、ピロリ菌陽性の場合は除菌。
 
②eCuraB
年に1~2回の内視鏡検査による経過観察に加えて、腹部超音波検査、CT検査などで転移の有無を調べることが望ましい。
また、ピロリ菌陽性の場合は除菌。
 
③eCuraC
C-1
転移の危険性は低く、施設の方針で、患者への十分な説明と同意の後に、再ESD、追加外科切除、切除時の焼灼効果(burn effect)に期待した慎重な経過観察、焼灼法(レーザー、APCなど)を選択する。
ただし、分化型・pT1a(M)・UL1・3cm以下、及び、分化型・pT1b(SM1)・3cm以下、の場合には内視鏡を再検し遺残の大きさを確認し、遺残癌の大きさとESD標本内の癌の大きさの合計が30mmを超える場合は原則追加外科切除とする。
また、SM浸潤部で分割切除あるいは断端陽性となった場合にも、病理診断そのものが不確実となるため、追加外科切除とする。
 
C-2
原則として追加外科切除。
年齢や合併症など何らかの理由で外科的胃切除を選択しない場合には、リンパ節転移の危険性や局所再発、遠隔転移などのデータから根治性を評価し十分に説明する。
再発時には根治困難であり、予後不良であることを説明する。
 
  • 手術
・治癒切除
 
・非治癒切除
緩和手術
治癒切除不能症例における出血や狭窄などの切迫症状を改善するために行う手術。
StageⅣ症例に対する日常診療としての選択肢。
 
腫瘍量を減らすための減量手術は延命効果なし。
 
  • 化学療法
・切除不能進行・再発胃癌に対する化学療法
切除不能進行・再発症例あるいは非治癒切除(R2)症例で、全身状態が比較的良好、主要臓器機能が保たれている場合は化学療法の適応となる。
PS0~2で局所進行、遠隔リンパ節、多臓器への遠隔転移を有する、などが挙げられる。
 
・適応の目安
①病理組織診断が確認されている。
②PS0-2。PS3以上の場合には化学療法は一般的には推奨されず、安全性と効果を考慮して慎重に適応を判断する。
③主要臓器機能が保たれている。
重篤な併存疾患を有さない。
⑤患者本人からのインフォームド・コンセントが得られている。
 
 
参考
胃癌治療ガイドライン第5版