消化器内科takoitaのメモ

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虚血性腸炎の診断と治療

  • 病態
主幹動静脈の障害を伴わずに大腸粘膜の虚血を起こす疾患。

 

 
一般的に高齢者に多いが若年者も稀ではない。
機序として血管側因子と腸管側因子の関与が指摘されている。
血管側因子として高血圧症や動脈硬化性疾患、虚血性心疾患、不整脈などの動脈血流が低下しやすい病態がある。
腸管側因子として便秘や大腸内視鏡検査、浣腸、下剤の服用といった腸管内圧の上昇する病態がある。
若年女性では経口避妊薬も原因の一つの可能性がある。
 
  • 症状
腹痛、下痢、血便の順に起こるのが典型。
好発部位は下行結腸、S状結腸、次いで横行結腸に多い。多くはsegmental(区域性)に侵される。
 
  • 診断
・診断基準
飯田らの診断基準は以下
①腹痛と下血で急激に発症
②直腸を除く左側結腸に発生
③抗菌薬の未使用
④糞便あるいは生検組織の細菌培養が陰性
⑤特徴的な内視鏡像とその経時的変化
 急性期:発赤、浮腫、出血、縦走潰瘍
 慢性期:正常~縦走潰瘍瘢痕(一過性)、管腔狭小化、縦走潰瘍瘢痕(狭窄型)
⑥特徴的なX線像とその経時的変化
 急性期:母子圧痕像、縦走潰瘍
 慢性期:正常~縦走潰瘍瘢痕(一過性)、管腔狭小化、縦走潰瘍瘢痕、嚢形成(狭窄型)
⑦特徴的な生検組織像
 急性期:粘膜上皮の変性・脱落・壊死、再生、出血、水腫、蛋白成分に富む滲出物
 慢性期:担鉄細胞
※③④は必須項目
 
・CT
浮腫性の腸管壁肥厚。
再灌流せずに完全虚血に陥ると壁は菲薄化し、腸管拡張、造影効果は消失し、腸管気腫を認めることもある。
虚血が全層性に及ぶと腸管狭窄を呈することもある。
 
浮腫やびらん・潰瘍、出血を認め、特にびらん・潰瘍は縦走することが多い。
急性期の内視鏡像として、血管拡張、うろこ模様、偽膜様所見、チアノーゼ所見の4つに分類される。
この順に病理学的に虚血の程度は重篤となる。
縦走するやや盛り上がった白苔と周囲のうろこ模様
縦走潰瘍
重症虚血性大腸炎 病変の中央部は全周性に粘膜の凹凸がみられ暗赤色を示す
 
・注腸造影検査
母子圧痕像は約75%の症例で認める。
近年ではCT・内視鏡検査が診断の主体となっている。
 
  • 治療
多くは保存的治療で一過性の経過をたどる。
なかには重篤化し大腸壊死から致命的な経過をたどるものがあり注意。
 
 
参考
わかる!役立つ!消化管の画像診断