消化器内科takoitaのメモ

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早期胃がんの内視鏡的深達度判断

  • 0-Ⅰ型 隆起型

     

一般的には隆起の高さが2,3mmまでのものを0-Ⅱa型とし、それを超えるものを0-Ⅰ型とする。
 
組織型は大部分が分化型(tub1,2,pap)であり、0-Ⅱaと比べるとpapが多い傾向である。
 
病変の大きさ(病変径)が深達度診断で大事。
2cm以下は殆どがm癌(92%とも)
3cm以上ではsm癌の可能性が高くなり進行胃癌の可能性も出て来る。
2-3cmでは、公基性の立ち上がりや腫瘍表面の陥凹面やくずれ像がある場合はsm癌を疑う。
 
M~SM1では、表面は発赤調の事が多く、顆粒状から粗大顆粒状の表面構造を呈し、淡い白苔の付着・出血などを伴い、表面構造は不整。
SM2以上では、表面の発赤・びらんが強く、結節状の凹凸不整、深い陥凹、潰瘍形成がみられ、周囲のひだの引き込み、病変周囲粘膜ひだの肥厚を認める。
また、基部が健常粘膜で覆われ、粘膜下腫瘍様の立ち上がりを呈するものはSM深部浸潤が強く疑われる。
胃内の空気少量時に、病変部の基部全体が持ち上がってくるような壁硬化像(腫瘍基部の緩やかな立ち上がり)を認める場合は進行胃癌を積極的に疑う。
 
  • 0-Ⅱa 表面隆起型
病変径が大事。
2cm以下は基本的にM癌が多い。
5cm以上では半数以上がSM癌のため詳細な所見が必要。
 
表面平滑な腺腫様の隆起や分葉構造の保たれている扁平隆起の場合は大きさにかかわらず基本的にM癌である。
SM癌を疑う所見は、部分的に陥凹を伴う、丈の高い隆起がある、粘膜ひだの引き込み、表面粘膜にびらん・発赤があり粗糙、大小不同の結節、全体的にいびつ、粘膜下腫瘍様の立ち上がりや丈の高い隆起・中心陥凹など。
 
  • 0-Ⅱa+Ⅱc
早期胃がんと進行胃がんの中間に位置しており、sm以深の場合が多い
2型進行胃癌に類似した場合で、2cmを超えたり、隆起の立ち上がりが粘膜下腫瘍様になだらかな場合には進行癌を考える。
陥凹は目立たず隆起成分が優位である場合、反対に隆起成分はいわゆる反応性隆起で陥凹成分が主体の場合はm癌の可能性がある。
 
  • 0-Ⅱc
早期胃癌の中でも最も頻度が高い肉眼型。
 
SM以下の浸潤を示唆するのは以下の所見。
①病変の大きさ:2cmを超える場合には約半数がSM浸潤。
②壁の厚み・硬化像:SM浸潤すると陥凹を維持したまま病変が厚みをもって立ち上がる。胃壁の弧が直線化することで直線的硬化像と判定する。病変全体が板状に持ち上がっていればMP以深の浸潤と考える。
③陥凹面の構造:陥凹内の結節の大小不同が目立つ、粘膜模様の消失
④陥凹面の色調:顕著な発赤(病変内の赤みが強い部分はSM癌が多いとされる)
⑤辺縁の隆起・膨隆像:辺縁の粘膜下腫瘍様の立ち上がり。腫瘍の周囲が健常粘膜に覆われた幅の広い周堤様隆起となる。
⑥ひだの所見:粘膜壁先端の腫大・融合所見
病変の大きさと深達度にもある程度相関がある。
上記の所見がなければM癌と考える。
 
UL(-)の0-Ⅱc型
周囲粘膜と類似した構造を示し、分化型癌では島状粘膜(インゼル)を呈することは少ない。
分化型では発赤調や褐色調を示す。
陥凹内に凸の形状を呈して、境界明瞭な発赤陥凹が典型例。
陥凹底は平滑か顆粒状で、凹凸不整・潰瘍形成・結節状隆起は認めない。
境界の周囲を縁取るように幅の狭い隆起(反応性過形成性隆起)を伴い、立ち上がりは急峻でアレア状を呈する。
 
陥凹部が2cmを超えると約46%がSM浸潤しているらしい。
 
 
UL(+)の0-Ⅱc型
深達度判断は最も難しい。上記のsm以深浸潤を示唆する指標のうち、
辺縁の隆起・膨隆像は活動性潰瘍を伴う病変周囲の炎症性浮腫と、
壁の硬化像は潰瘍瘢痕の線維化による壁硬化像と、
陥凹面の発赤は潰瘍による炎症性の発赤や再生上皮の発赤と、
それぞれ鑑別が困難である。
ひだの集中は、分化型癌では粘膜下浸潤後も線維化が少ないことから、ひだ集中は潰瘍瘢痕の合併と考えれる。つまりひだの集中ではなく、ひだ先端の融合や粘膜下腫瘍様の立ち上がりなどに注目する。
 
  • 0-Ⅱb
色調は発赤・褐色・周囲と同色調と様々。
分化型が約80%、未分化型が約20%
深達度はその殆どがM癌。
 
  • 0-Ⅲ
純粋な0-Ⅲ型は極めて少ない。多くは0-Ⅲ+Ⅱc型や0-Ⅱc+Ⅲ型といった混合型として認められることが多い。
0-Ⅲ部分の潰瘍は消化性潰瘍であることが多いため、0-Ⅱc部分を中心に判断する。
潰瘍(0-Ⅲ部分)が深く掘れていても、辺縁の陥凹部分(0-Ⅱc部分)が粘膜内病変と考えられればm癌と判断し、sm以深浸潤を示唆する指標を認めたらsm癌と判断する。
潰瘍が0-Ⅲ部分としての消化性潰瘍であるか、癌性潰瘍であるかは注意を要し、癌性潰瘍であればsm癌又は進行癌を考える必要がある。
消化性潰瘍は辺縁整な形状であり潰瘍底も平滑であるのに対し、癌性潰瘍は辺縁不整で潰瘍底にも凹凸不整が目立つ。
Ⅲ部分が多い0-Ⅲ型や0-Ⅲ+Ⅱc型では潰瘍に伴う浮腫と癌浸潤による粘膜下腫瘍性隆起の鑑別が困難であり、深達度分類は難しい。
 
 
  • その他
未分化癌は殆どが陥凹型
 
 
参考
消化管癌カラーアトラス
内視鏡診断マル秘ノート