消化器内科takoitaのメモ

消化器内科医takoitaのメモ

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癌性疼痛に対する薬物療法

一日最大投与量は4000mg 50kg未満の患者には一日最大60mg/kg(1回15mg/kg)

投与後1時間で鎮痛効果を発揮するためレスキューに使える

半減期も短く、効果の切れ目に注意

投与量は投与経路(内服、坐薬、注射)によらず同じ

 

  • NSAIDs

抗炎症作用は強い

腎障害や消化管粘膜障害に注意

PPIやH2blockerを併用

COX-2選択性薬剤の長期使用時は心血管系有害事象(血栓)にも留意

 

コデイン

CYP2D6による代謝をうけ、体内でモルヒネ代謝される

主な副作用もモルヒネとほぼ同様

モルヒネとの用量換算:コデイン120mg≒経口モルヒネ20mg(6:1)

10%製剤は医療用麻薬扱いであり、麻薬処方となる

投与一時間で効果を発揮するためレスキュー使用出来る

半減期は3,4時間 効果の切れ目に注意

定期投与は3,4回/日で

300mg/日を超えると副作用が鎮痛効果を上回るため、第三段階オピオイドへの変更を考慮する

 

・トラマドール

麻薬処方箋不要

主にCYP2D6により代謝され、代謝物のM1がμ受容体に作用

日本人の5%はCYP2D6欠損のため、トラマドールの効果を発揮しない

モルヒネとの用量換算:トラマドール100mg≒経口モルヒネ20mg(5:1)

セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害作用もある

副作用は第三段階のオピオイドと同様だが、セロトニン症候群や痙攣が起こる事もある

徐放剤以外は投与一時間で効果を発揮するためレスキューに使える

400mg/日以上は有効性安全性が示されない

トラマドールとアセトアミノフェン配合剤は非癌性慢性疼痛と抜歯後疼痛に保険適応

 

処方例

速効製剤:1回25mg1日2〜4回内服から開始

徐放製剤:1回100mg1日1回内服から開始

 

モルヒネ

肝でグルクロン酸抱合を受けて活性代謝産物となる(シトクロームP450を介さないため薬物相互作用のリスクは低い)

代謝産物の45〜55%のM3Gは、鎮痛効果はなく、ミオクローヌスやせん妄などの中枢神経毒性を有する

代謝産物の9〜55%のM6Gは、鎮痛効果はモルヒネの3倍、せん妄や眠気や悪心や呼吸抑制などの中枢神経毒性を有する

代謝物は全て腎排泄。なので、腎障害時は有害事象が起きやすい

Ccr<50ml/分なら徐放剤や注射剤の持続投与は推奨されない

投与経路間の換算比

経口60mg=注射20〜30mg=坐薬30〜40mg

経口300mg=硬膜外10〜30mg=クモ膜下1〜3mg

 

オキシコドン

シトクローム(CYP)で代謝されるため相互作用に注意

代謝産物は

ノルオキシコドン(85〜90%):鎮痛効果なし

オキシモルフォン(1.5%):オキシコドンの14倍の鎮痛効果

オキシコドン未変化体(10%):鎮痛効果あり

腎機能の影響受けにくく、腎機能障害があっても比較的安全に使用可

経口モルヒネ60mg=経口オキシコドン40mg

経口オキシコドン40mg=オキシコドン注30mg(静脈,皮下)

 

フェンタニル

悪心、便秘、眠気、せん妄などの副作用が他の強オピオイドよりも少ない

CYP3A4を介して代謝されるため相互作用に注意

腎機能の影響受けにくく、腎機能障害があっても比較的安全に使用可

オピオイド導入をフェンタニル貼付剤で行わないこと

定常まで時間がかかり、十分な鎮痛が中々得られなかったり、過量時に困るため

必ず他のオピオイドから置き換える

フェンタニル貼付剤25μg/hr=フェンタニル注0.6mg

フェンタニル注0.6mg=経口モルヒネ60mg

 

・タペンタドール

μ受容体とノルアドレナリン再取り込み阻害による

他の第三段階オピオイドと比較して便秘悪心嘔吐を生じにくい

グルクロン酸抱合による代謝で肝機能腎機能薬物相互作用の影響を受けにくい

経口オキシコドン20mg=経口タペンタドール100mg

400mg/日を超える投与は安全性が示されない

 

・メサドン

オピオイド作用及びNMDA受容体拮抗作用

半減期が長く個人差も大きいため調整が難しい

QT延長による致死的不整脈のリスクがある

モルヒネと比較して腎機能低下例でも比較的安全

 

・ヒドロモルフォン

経口モルヒネ20mg=経口ヒドロモルフォン4〜5mg

中枢神経毒性をもつ代謝産物H-3-Gが蓄積するため傾眠や呼吸抑制に注意

モルヒネと比較して腎機能低下例でも比較的安全

 

  • 骨転移に対して

・ビスホスホネート製剤

ゾレドロン酸、腎機能低下例では排泄が遅延するため用量調節必要

 

・デノズマブ

腎機能低下例でも比較的投与しやすいが、低カルシウム血症を予防するため、カルシウムビタミンDの投与が必要

 

どちらも顎骨壊死のリスク評価が必要

 

 

参考

ePEACE