消化器内科takoitaのメモ

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Clostridium difficile関連下痢症(CDAD)

CD腸炎、Clostridium difficile腸炎

  • 概要

CDADは「下痢などの症状を呈し糞便検査でC.difficile毒素ないし、毒素産生性のC.difficileが陽性、もしくは内視鏡的に偽膜性腸炎の所見を認めるもの」と定義される。

 

C.difficileは芽胞を形成する偏性嫌気性のグラム陽性桿菌であり、そのうち約30%の毒素産生株がCDADの原因となる。

病原性はtoxinA、toxinB、binary toxinの3種類の毒素に由来する。

感染は芽胞を介して経口感染により生じる。芽胞は通常の室内環境において数ヶ月から数年存在する。胃酸に強く容易に腸管に到達し、嘲笑で芽胞が発育し無症候性に腸内細菌叢集落を形成する。

正常細菌叢が整っている環境下では病原性を示すことはないが、抗菌薬の使用などで腸内細菌叢が撹乱されると菌交代現象が起こり、多くの抗菌薬に耐性を有するC.difficileが大腸内で増殖し腸炎を発症する。

 

  • 分類

 

  • 症状

臨床症状は、水様性下痢、腹痛、発熱が多い。血便がみられることもある。

必ずしも下痢を伴うわけではないことに注意する。

特に劇症型では高度の炎症による腸管麻痺でむしろ便秘気味になることに注意。

低血圧、頻脈、腹膜刺激症状などが伴う場合は積極的に劇症型を疑う。

 

  • 診断

便中にC.difficile毒素が検出されれば確定する。

現在toxinA・toxinBの両方を検出するキットが広く使用されているが、その感度は60-80%とされる。陰性であってもCDADを否定はできない。

C.difficile高原であるglutamate dehydrogenase(GDH)抗原を検出するキットもある。

GDH抗原は毒素より感度が高いが、それでも約10%の偽陰性を認める。

また、GDH抗原陽性でトキシン陰性の場合は、病原性のないトキシン非生産株を検出している可能性があり、結果の解釈は臨床症状や他の検査など総合的に判断する必要がある。

偽膜性腸炎の診断には下部消化管内視鏡検査が有用である。

偽膜はS状結腸から直腸に好発し、その特徴的所見から診断は容易である。しかし、偽膜を形成するものは全体の10%に過ぎず、偽膜がない事でC.difficile感染症を否定はできない。

 

  • 治療

重症度に応じて治療方針を決定する。

まず、使用中の抗生剤を可能な限り中止するのが原則。

軽症例ではこれで改善を認めることもあるが、効果がない場合は薬物治療の適応となる。

使用される薬剤はメトロニダゾール(MNZ)とバンコマイシン(VCM)の2剤。

ダフクリアが新規薬剤として選択肢。

軽症から中等症では治療効果に差はないが、安価でありVCM耐性腸球菌発生のリスクがあることを考慮し、MNZ内服が第一選択となる。

重症例や再発例ではVCM内服が推奨される。

重症例や劇症例ではVCMとMNZ併用療法が考慮されるが、VCM単剤と比較して明らかな有用性は報告されていない。

再発難治例に対する糞便移植法の有効性は報告されているが、日本ではまだコンセンサスが得られていない。

なお、トキシン検査は治療開始後も50%で6週間以上陽性が持続するため、治療効果判定には使用しづらい。

処方例:

・初発かつ中等症まで

①第一選択

フラジール250mg6T分3 10-14日間 内服

フラジール250mg4T分4 10-14日間 内服

アネメトロ500mg*3回/日 10-14日間 点滴静注(内服困難時)

②第二選択(フラジール使用できない症例)

バンコマイシン0.125g*4回/日 内服 10-14日間

・1回目の再発

中等症までであれば初回と同様の治療

・重症または2回以上の再発

バンコマイシン0.125g*4回/日 内服 10-14日間

治療に反応しない場合

バンコマイシン0.25-0.5g*4回/日 内服 10-14日間

注腸を行う場合

バンコマイシン0.5g+生食500-1000ml/回*4回/日 注腸

※新規薬剤

・bezlotoxumab(ジーンプラバ®)

toxinBを補足する抗体医薬。再発抑制を適応とする。

toxinBを中和するといわれる。

繰り返し再発する様な症例が良い適応か。基準は添付文書に書いている。

適切なC.difficile治療を行いながら10mg/kgを単回点滴静注する。

薬価は33万円もする。

・フィダキソマイシン(ダフクリア®)

適応は、フィダキソマイシンに感性のクロストリジウム・ディフィシルによる感染性腸炎(偽膜性大腸炎を含む)。

C. difficileをはじめとする一部のグラム陽性菌に抗菌活性を示し、ほとんどのグラム陰性菌には抗菌活性を示さないなど抗菌スペクトルが狭く、消化管吸収もほとんどなく、腸管内のみで作用する特徴をもっている。特に、C. difficileに抗菌的に作用するほか、芽胞形成や毒素産生を抑制する。

投与期間は原則10日間。

その他

プロバイオティクスは実はまだエビデンスが不確実。

 

 

参考

消化器疾患最新の治療2019-2020