消化器内科takoitaのメモ

消化器内科医takoitaのメモ

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痙攣の対処と検査

  • 痙攣について
痙攣とは「全身または一部の筋肉が発作的に不随意収縮する神経症候」である。

 

 
強直性痙攣は筋肉の収縮が長く続き、こわばった状態。「つっぱる」とよく表現される。
間代性痙攣は筋肉が収縮と弛緩を規則的に交互に反復する。四肢は伸展と屈曲を繰り返し、「がくがく」と表現される。
 
  
  • まずはABCの確保、次に痙攣を止める
酸素投与、気道確保、輸液路確保。バイタルが重要。
 
ECGにてVFの否定(モニターを体感につけ四肢を押さえて測る)。
低栄養やアルコール依存疑われれば点滴にはビタミンB1を混注。
  
てんかんや症候性てんかんである場合はすぐにバイタルが崩れることはあまりない。
  
痙攣の原因が循環血漿量低下に伴う脳血流低下による事がある。この場合、痙攣にジアゼパムを使うと更に状態が悪化する。まずはABC。
血圧が低めの痙攣患者ではまずは心疾患(AMIや不整脈)・出血性疾患を鑑別する。
脈が触れないまたは血圧が低い痙攣は要注意と考える。頸動脈が触れ、血圧が保たれていれば、抗痙攣薬を使用し痙攣をすばやく止める。
 
バイタルが安定しているなら、痙攣を速やかに止める。
ジアゼパム10mg(ホリゾン®︎、セルシン®︎)を静注。(高齢者では5mg。効果が遷延したり呼吸抑制が出現することもあるため。体格や年齢を考慮する)
すぐに効き作用時間の短いジアゼパムが救急外来では良い適応。
ジアゼパムは生食やブドウ糖液で混濁するため希釈せずに使用する。
筋注はあまり推奨されず直腸内注入という方法もあるらしい?
  
 
  • 原因検索
痙攣を止めつつ原因検索・外傷検索を行う。
 
血ガス:結果をすぐに確認できる。電解質異常・低酸素血症・低血糖高血糖など。乳酸値やPaCO2の上昇は痙攣患者によく見られる所見。痙攣に伴う乳酸値の上昇は通常痙攣が治まって30分ほどで上昇は見られなくなる。
 
心電図:失神後のsyncopal seitureや不整脈の可能性。抗痙攣薬のフェニトインには血圧低下・徐脈作用があり、投与量・投与速度は勿論、投与前に心電図をとり異常所見がないことを確認する。
 
頭部CT/MRI頭部CTはほぼ必須となってくる。(脳卒中・占拠病変・外傷などの検索)
MRIは撮影時間も長いため、今撮影すべきかどうか考えなければならない。脳梗塞による急性症候性発作による痙攣と考えており、かつ発症4.5時間以内でtPAの適応範囲内と考えるなら、脳梗塞の確定診断や治療方針決定に必要である。
血液検査:電解質、血糖、肝機能、腎機能の確認。抗痙攣薬を内服しているなら血中濃度測定(特に肝機能障害・腎機能障害の患者では薬物動態に変化を生じることがあるため血中濃度測定が推奨される)。
 
発熱や炎症反応上昇、感染兆候、性格変化、意識障害などあれば髄膜炎脳炎も鑑別にあがる
脳波は後日やれば良い。救急外来ではそこまでは厳しい、救急外来でてんかんと確定診断はつけれない
  
抗痙攣薬の内服の有無を確認する。
内服の可能性がある場合や不明の場合は、各薬剤の血中濃度を提出することも有用。現在の内服が十分か否か判断できる。至適範囲以下である場合、現在使用している抗痙攣薬を増量することで今後の痙攣が抑えられる場合がある。至適範囲内であるなら薬剤自体を変更する必要があるかもしれない。
 
・痙攣を誘発しうる薬剤
キノロン系+NSAIDsや低Na血症誘発薬(ループ利尿薬、向精神薬)
低NaでもNa120代なら痙攣の頻度は1%ほど。重要なのは急性か慢性なのか。
  
 
  • 痙攣持続・繰り返す場合
ジアゼパムを3〜5分毎に5mg静注(最大総量20mgまで)
ジアゼパムivの効果は15〜20分程なので注意
 
ホスフェニトイン(ホストイン®︎)又はフェニトイン(アレビアチン®︎)が重積症例には使いやすい。(ホスフェニトインの方がより短時間で投与可能)
使用前に心電図をとり、徐脈性不整脈(房室ブロックなど)がある場合は使用を控える。
  
ホスフェニトインは22.5mg/kg。生食や5%ブドウ糖液などで希釈できる。
3mg/kg/分で初回投与。
ただし、150mg/分以下で投与。
  
フェニトインは5-20mg/kg。内服歴なければ10-20mg/kgほどで。希釈せずに使用する。1Aが5ml250mgなので、体重30-50kg程なら500mg、50kg超えるなら500mg又は750mg、70kgを超えるなら750mg又は1000mg、を急速飽和する。
50mg/分(1ml/分)以下で投与。
 
必ずECGのモニターをしながら(不整脈・低血圧・呼吸抑制起こりうる)。また血管痛・血管障害を起こしうる。血管外漏出によって壊死を起こす(ホスフェニトインのはほぼ中性のため血管障害はまれ)。
 
これでも止まらなければ気管挿管神経内科コンサル・原因検索(必ず外傷も!)を並行のうえ

 
 
  • 抗痙攣薬の予防内服
再度痙攣の起こる可能性を考え、必要ならば抗痙攣薬を予防内服しなければならない。
痙攣を繰り返している、高齢者などは再発のリスクが高い。
痙攣の原因が不整脈や出血に伴うものなら原因治療が不整脈の予防となる。
妊婦の子癇では硫酸マグネシウムの投与が必要。子癇発作がコントロール出来ない場合や胎児機能不全の場合は急速遂娩の適応となる。産婦人科にコンサルトを。
 
 
  • 急性症候性発作の主なもの
・脳血管障害
脳血管障害から7日以内に起こる発作
・中枢神経系感染症
中枢神経系感染症の活動期に起こる発作
・頭部外傷
頭部外傷から7日以内に起こる発作
代謝
電解質異常、低血糖、非ケトン性高血糖、尿毒症、低酸素脳症、子癇、全身性疾患に関連して起こる発作
・中毒
麻薬、薬剤、薬剤過剰摂取、環境からの曝露(CO、鉛、有機リンなど)、アルコール
・離脱
アルコールや薬剤の離脱に関連して起こる発作
・頭蓋内手術後
頭蓋内脳外科手術の直後に起こる発作
脱髄
急性散在性脳脊髄炎の急性期に起こる発作
・多因性
 
同時に起きたいくつかの状況と関連した発作
  
 
  • その他
高齢者のてんかん発生率は70歳以上で急激に増加する。高齢者だからといっててんかんは否定できない。
 
画像所見と臨床所見が合わない場合がある。例えば右の脳出血で右半身にも何らかの異常がある場合、脳出血による痙攣の併発、すなわち急性症候性発作を考えなければならない。
 
 
  • 痙攣重積状態(status epilepticus)
①少なくとも5分以上持続する発作
②意識が回復せず発作を繰り返す場合
以前は持続が30分以上としていたが最近では5分以上で重積状態と診断し治療を開始する。
 
てんかん重積発作は全身痙攣重積状態(GCSE)と、痙攣発作を伴わないてんかん発作が持続する非痙攣性てんかん重積状態(NCSE)に分類される。
てんかんの診断がすでについている場合、てんかん重積発作の原因の多くは抗てんかん薬の中断や不規則な服用と言われる。てんかん重積状態のうち、抗てんかん薬2剤による適切な初期治療を行っても発作が終息しない場合、難治性てんかん重責状態(RSE)と呼ぶ。RSEに移行するのはGCSEと比較してNCSEで有意に多い。
  
 
参考
jmed53もう困らない救急・当直ver3
研修医当直御法度百例帖第2版
小児けいれん重積治療ガイドライン2017
救急外来ただいま診療中